セレスピード考
セレスピード考

アルファロメオのセレスピードに関して最近自分なりの解釈ができてきました。

今さら何をと思われる方もいらっしゃるとは思いますが、これまでにセレスピードを体験されていない方と、セレスピードを避けられていた方、そして私のようにセレスピードが理解できていなかった方へ、ルッソの「セレスピード考」をお伝えします。

156が登場してアルファロメオの注目度と認知度が飛躍的にあがっていったように思います。それまでのロメオに対するネガティブなイメージが払拭され、一躍「お洒落なこだわりクルマ」のように扱われるように感じました。そんな雰囲気に違和感を感じて、156を素直に受け入れる事ができていなかった私に、さらに追い討ちをかけるかのごとく登場したシステムがセレスピードでした。

雑誌も「AT免許で乗れるお洒落イタ車登場」といった扱いでしたし、ディーラーもそれに倣って新規女性ユーザーへの売り込みに躍起になっていました。こうなると私は「セレスピードだけは扱うものか」と反発してしまいました。事実、99年から00年までは1台も販売できませんでした。

自分が取り残されている理由は明らかでした。セレスピードを素直に受け入れることなく避けてしまったこと。そして理解できないまま販売することはできなかったからです。01年になりやっとセレスピードを理解するチャンスが巡ってきたのです。

■ 147で開眼

今年(2001年)の初めに147のセレスピードに乗る機会を頂きました。それまでに156のセレスピードに乗った事はありましたし、かなりの距離を乗り込んでもいました。正直、嫌いではないけどやっぱりマニュアルで乗るクルマだと決めつけていましたし、ハンドルのボタンでギアを換えるのも失敗が多く、使いこなせていなかったので期待はしていませんでした。

乗って最初に驚いたのはそのシフトフィーリングの違いでした。ハンドルの裏側にあるパドルを何の期待もしないでカチっと動かすと意外にも素早いシフトアップ。あれって感じで更にもう一回カチっといくとやはり感じの良いシフトアップ。試しにシフトダウンをしてみれば更に気持ち良く「フォン」。しばらくは楽しくて仕方なく、シフトアップ、シフトダウンを意味もなく繰り返して走り回っていました。

147ってセレスピードもオッケー!(笑) 進化したセレスピードに触れて初めてセレスピードを受け入れた自分を反省しました。

その後、イタリアに行った際に選んだ現地の移動クルマももちろん147セレスピードだった事を打ち明けます。アウトストラーダから市街地走行までを存分に体験しました。その時のミラノ市内の混雑した時間帯での運転でシティモードの恩恵を受け、セレスピードを完全に理解できたのでした。

■ セレスピードって

結局、自分なりに理解し受け止める事がセレスピードを知る上で最も重要な事でした。その為には乗ってみること。それ以外に本質を知る術はありません。自分で作っていた垣根を越えない限り、その道はないと思い、156セレスピードを購入しました。そして156に乗りながら147を思い出しつつ日常に使ってみました。

購入する際に一つだけ自分に言い訳をしました。それは「オートマを買うのではなく、マニュアルを買う」という事です。そしてこれが全てだった事をあとで知りました。

どうにも慣れる事ができないボタンを押す事によるシフトチェンジに乗り始めてすぐに悩みました。上手く扱えない原因の一つにハンドルを切り込むとボタンも一緒に動いてしまうと言う事があります。ボタンを正確に押せるのは割とハンドルが直進状態にある時に限られます。これにはかなり悩まされたのですが、ある日簡単に解決しました。シフトレバーを使う事を忘れていました。そしてこの日を境にボタンを使う事忘れました。156のセレスピードはボタンではなくシフトレバーを使って乗る事が最適でした。

ここで156セレスピードをどんな風に乗っているのかお伝えします。

シフトアップの際は多少ですがアクセルを戻します。基本的には踏みっぱなしで良いらしいのですが軽く戻しています。シフトダウンに関しては大抵クルマに任せて回転を合わせてもらいますが、時々自分で合わせてみたりします。一速には自分では滅多に落としたりはしません。クルマ任せと自分で決めるのを楽しめる事も少しだけ楽しんでいます。自分よりも上手に「フォン」なんて決められると悔しいですがクルマが決めるよりも上手に「フォン」なんていくと気分が良い。

そうなんです、セレスピードは断じてオートマではないのです。ただクラッチがなくなったマニュアル車だと思います。渋滞時や急な坂道発進、疲れていて運転を怠けたい時にその補助をしてくれるシステムが装備されているのがセレスピードなんだと認識しました。マニュアルのクルマを選ぶ選択肢にセレスピードを入れる事を追加しておいても良いと思います。

■ 最後に

セレスピードに関する不評についても触れておきたいと思います。

156セレスピードの99年は悪評を得た年でもありました。デリバリーされたクルマがセレスピードのシステムの不具合により走行不能になるというトラブルが連発し、ディーラー、インポーターともにかなり辛い状態になっていたように思います。もちろん購入されたユーザーにとっても非常に辛い事であったと思います。しかし新しいシステムが導入されたクルマですからこのような不安は多少なりともでてくることは否めません。

問題は対処の仕方です。セレスピードを理解した上で販売していたかどうかによってユーザーの受け止め方も変わります。走行不能状態がもたらすなんとも言えない気持ちは、体験した方以外には理解できないものだと思います。危険が伴う場合もありますのでいきなりその状態になると慌ててしまう事は間違いありません。心構えを持って乗ると言うのも変な話ですがトラブルの種類を知っておくことは大切だと思います。

かく言う私も路上にて一度立ち往生しました。何回も聞いていたセレスピードのトラブルでした。信号待ちしていて何気なくギアインジケーターを見ると「N」! これはもしかしてと思い慌ててシフトレバーを動かし1速に入れてみますが無反応。慌てずにハザードを点灯させました。さすがにすぐ後ろのクルマの方にはムッとされましたがひとしきりクルマをやり過ごし路肩に押して寄せ待機となりました。

原因はアクチュエーターのオイル漏れとポンプの故障が一度に出るという事でした。このクルマは並行輸入車でしたがディーラーにてパーツ供給を受けイグザミナーで最新のデータに書き換えてもらい現在は快調に動いています。新しいデータにしてシフトチェンジの感じも良くなりました。

唯一の不安はこの状態になった時に落ち着いていられるかどうかという事でしょう。できれば動けない状態などは体験したくないはずです。この心構えが持てるのなら他の何も心配する必要がない事でしょう。そのくらい現行アルファロメオはクォリティ管理がなされてきていると思います。(2001/12/08 by Eワヤマ)