1991 ALFA ROMEO SPIDER VELOCE

115スパイダー・ベローチェ(最終モデル)の納車整備です。

メニューは、ミッションOH、クラッチ交換、ブレーキホース交換、フロントハブベアリングOH、センターマフラー交換、燃料フィルター交換です。メニューに関しては前オーナーにアドバイスした件と次オーナーの思い入れと乗り方を勘案して、最終的にメカが試運転して決定しました。予算もありますしね。

中央に見えるのがトランスミッションです。オイルまみれで真っ黒。FFの現行スパイダーとはずいぶん景色がちがいます。
フロント側から見たところ。右上の銀色の部分がエンジンのオイルパンです。
気がついたらミッションが下りていました。真っ黒だぁ。

うしろ(右)に突き出しているのがシフトロッド(黄矢印)です。

反対側から見たところ。
ミッションを外した場所を見上げると穴が開いていて室内が見えます。ここでシフトレバーがつながるのですね。
ミッションを外してクラッチが現れました。
外したパーツ。プロペラシャフトもあります。
オーバーホールするまえにせっせとお掃除。
ミッションが割れました。
中から出てきたのはギアのついたシャフトが2本。
アップにしてみました。ポルシェタイプのシンクロで、クラッチ操作が荒いとギヤ鳴りしますし、ギヤ自体も損傷します。ギヤを修正しましたが、1速へ入れるときは2速を舐めてからが作法です。このクルマは手荒な操作をすると嫌われます。
インプットシール、アウトプットシール交換しシール剤を塗って組みました。
ミッションのクラッチ側になにやらセンサー(黄矢印)がついていてコードが出ています。これはバックランプのスイッチだそうです。

ということは、これが壊れたら車検が通らない。部品交換するためにはミッションを下ろさないといけないのか。(たいへんだぁ) というわけで、ミッションを載せるまえにテスターを当てて、ギアをバックに入れれば抵抗がなくなる(導通する)ことを確認していました。

ミッションのシフトロッド部のアップです。左右に丸い金網があるのは通気口だとか。ミッション内のオイルや空気が熱くなって膨張したときに空気穴がないと最悪爆発するそうです。
その下に回転センサーというか、スピードメーターへのワイヤーをつなぐところがあります。スピードメーターは電気式ですが、途中に変換機があってそこまではワイヤー式になっています。
クラッチを交換しました。
そこにミッションを取り付けました。こちら側にクラッチレリーズが見えています。

きれいにしておくと、もしもオイル漏れがあったときにすぐにわかりますし、問題の箇所をはやく特定できます。

リアのデフです。意外にコンパクトですね。
フロントのハブベアリングを一旦外して洗浄し、再度グリスアップして組付け、ハブシールを交換しました。そしてベアリングのプレロードの調整をしました。これが肝で、強すぎても弱すぎでもだめ。いい加減な調整をすると焼き付きや破損につながります。
左から撮影したエンジンルーム。縦置き直列4気筒エンジンが収まっています。
室内はベージュの革シートがおしゃれです。シフトレバーが上ではなく、手前に飛び出しているのが特徴。最初は違和感がありますが、じきに馴れます。
納車整備完了です。

そろそろ旧車と呼ばれてもおかしくないベローチェ。街で時々見かけますが、コンディションの良い個体は減ってきているように思います。この時代のクルマは今よりもコンパクトでした。車幅が狭いので細長く見えます。乗り込むとドアを閉めても外の物音がよく聞こえます(幌が閉まっているのに)。エンジンをかけるとアイドリングは安定しています。えーっと、1速は左の上! 上に入れるまえにちょっと下に入れるのがコツ。シフトレバーが長いので、シフト操作していると右手で空中に絵を描いているような感じ。いや、指揮者のタクトかな。クラッチをつなぐとスルスルと動き出します。

整備前の状態を知らないのですが、クラッチは問題ないし、ミッションもスムーズです。いい感じで走ります。フィアット・バルケッタよりも「小船」というイメージが強い。実際、四輪とも外してリフトアップされている様はまるでボートです。パワーとスピード競争に疲れたときは、こういうクルマとのんびり付き合っていくスローライフにも憧れます。