1989 BMW 320i

BMW 320i(E30)の5速マニュアルが車検のために入庫しました。すでに14万kmをあとにしていますが、オーナーの「もうすこし長く乗りたい」というご要望を受け、以前から懸案だったクラッチ交換に加えて、エンジンマウント、ミッションマウント、燃料フィルタ交換等を行なうことになりました。
直列6気筒2リッターSOHCエンジンは通称「スモールシックス」と呼ばれ「カニ」のようなインテークが印象的です。かつて「六本木のカローラ」とも呼ばれていましたっけ。メカニックさんにとっても思い出深いモデルのようで「E30はマニュアルがなくてもバラバラにできますよ」。
右前から下回りを見たところ。相応に年季が入っています。
メカニックさんから聞いた余談ですが、昔、事故で前をぶつけたE30が入庫してきて、修理してもエンジンがかからなくて散々悩んだことがあるそうです。燃料も来てるし火花も飛ぶしセルも回るのに、どの部品を換えてもどうしてもかからない。結果、左の写真にあるクランクシャフトの回転角センサーが読み取る歯車部分が衝突のショックでずれて点火時期が狂ったのが原因だったとか。歯車部分は内側のプーリー部分と一体ではなく、はまっているだけなのだそうです。
本題に戻ります。マフラーを外してあるので、ミッションからデフにつながっているプロペラシャフトが見えています。
うしろからリアの足回りを見上げたところ。トレーリングアーム式リアサスペンションです。
外したマフラーも床に置くと長〜い。
ミッションが下りて、フライホイールが現れました。
これが下りたミッション。真っ黒です。これはオイル漏れのせいだけではなくて、BMWやポルシェなどのドイツ車はとくに下回りに「ガードワックス」という錆び止め剤がたっぷりと塗ってあって、それが溶けるとホコリがついて真っ黒になってしまうのです。
ミッションの反対側です。飛び出している棒がシフトリンケージです。
例によってミッションは汚れを落として塗装してありました。サイドにGETRAG(ゲトラグ)という文字が見えます。
ミッションを取り付け中。異様にきれいです。
古いパーツ。左上から順に、クラッチ板、レリーズベアリング、クラッチカバー、エンジンマウント2個、ミッションマウント2個、燃料フィルターです。エンジンマウントは変形して切れかかっていました。
右エンジンマウント。
左エンジンマウント。
ミッションマウントが2個。
燃料フィルターは左うしろにあります。

他に、ブレーキオイルが漏れていたので、ブレーキプロポーショニングバルブ(前後の効き具合を調節するパーツ)を交換しました。

完成しました。(撮影:E30大好きメカニック)

見違えるほど良くなりました。誤解を恐れずに書かせていただくと、整備前はシフトレバーはふにゃふにゃで節度がないし、クラッチも滑っているんじゃないかと思う状態でした。それがクラッチは軽くスムーズになり、シフトレバーのガタがなくなり、ミッションも気持ちよくシフトできるようになりました。マウントを交換したせいか、アクセルを踏んだときのツキも良くなりました。いまの3シリーズにはない、独特の乗り味のあるクルマです。これはオーナーさんも喜んでくださるはず。距離や年数、車検だからということで乗り換えるのではなく、気に入ったクルマを大事にして、長く乗りたいというお気持ちに応えたいとルッソは思うのでした。