1998 ALFA ROMEO 145TS

走行62,000kmの145が「クラッチが滑ることがあるのでそろそろ交換したい」ということで入庫することになり、クラッチ交換のためにはトランスミッションを下ろさねばならないことと、ミッションのオイル漏れと内部のチェック、ベアリング交換と同時にミッションのオーバーオールを行い不安を払拭します。駆動系のリセットに付随してエンジンマウント2個、ミッションマウント1個も交換してシャキっとさせる作戦です。

ルッソに取材に入ったらすでにミッションが下りていました。

下りたばかりのミッションです。
このようにオイル漏れで真っ黒です。
ミッションを外したあとのクラッチカバーです。その向こうの、周囲がギザギザになっているのがフライホイール。スターターモーターで回してエンジンを始動します。

クラッチとフライホイールを外した状態。

中央にクランクシャフトが見えます。この後 黒いカバーを外してミッションが外れたときにしかできないシーリングを施しました。

古いクラッチカバー(左)とクラッチ板です。

クラッチカバーのダイアフラムの爪が(黄矢印)削れています。クラッチ板の溝はまだ残っていますが、全体に古さ(経年劣化)を感じます。錆が出ているバネが4個見えますが、これはクラッチを繋いだ時にショックを和らげる役目をしています。これだけ錆びていると異音の原因になりかねません。

ミッションを手際よく分解していきます。

分解したら内部の鉄粉堆積など、各部を慎重に点検しながら清掃していきます。

メインシャフトとカウンターシャフトを支えるベアリングが2個ずつあるのですが、それにガタが出ると異音や重大なトラブルの原因になるため、オーバーホールを機に交換します。

また、クラッチのレリーズベアリングがはまるフロントシール(黄色いキャップがはまっている部品)も交換します。レリーズは常にこのシールケースを移動しているので当然磨耗します。せっかくレリーズベアリングを新品にしても磨耗した部品の上を移動していては引っかかりやクラッチ切れ不良が起こる可能性があります。

清掃と点検を終えたパーツを慎重に組み上げていきます。
残るは5速ギアの部分のみ。

ずいぶんきれいになりましたし、きちんとシールしてあるのでオイル漏れもなくなります。すなわち「安心」が付加されるわけです。

新しいクラッチを取り付けたところ。

ミッションが載りました。

ミッションは丁寧なシフト操作、クラッチの繋ぎ方ひとつで寿命を延ばすこともできます。今回の145のミッションの状態は62,000kmという距離でもシンクロ(ギヤを入れやすくする部品)の状態も良く問題ありませんでした。ここまで愛情かけてオーバーホールしたミッションですから、どうか今までと変わらず大事に扱ってください。

新しいエンジンマウント(黄矢印)もつきました。

ALFA145に長く乗られるならば、クラッチ交換時にミッションのオーバーホールをお勧めします。手をかけることで愛車に対する信頼と愛着が増すことでしょう。 手をかけて、見えないところを目視や手触り、測定で確かめていきます。たとえばクラッチ交換後にミッションに負担がかかってしまい、再度下ろすことを考えれば、同時に行なっておいたほうがお客様の負担も軽減できます。 

アルファロメオにお乗りで「そろそろクラッチかな」と気になっている方はどうぞご相談ください。

後日お客様から「作業後、クラッチが非常に軽くなり、いままでストレスとなっていた重さがなくなりました。ミッションの繋がり、エンジンマウントの効果、ブレーキとのバランスが気持ちよくなりました。完璧です」とのコメントを頂戴しました。こちらこそありがとうございました。