LANCIA LYBRA 1.8

ランチア・リブラを購入された販売店に整備を依頼することができなくなったとのご事情で点検をご予約いただいたのですが、その入庫前に「走行中、変な音がしてバッテリーランプが点灯。その後エンスト。ハンドルが重くエアコンも効かない」とお電話をいただきました。メカニックはドライブベルトが外れたものと判断し、それ以上自走せずJAFにて入庫していただくようお願いしました。

お電話をいただいた時点で必要なパーツを注文し、入庫当日に修理できるように段取りを取りました。

ボンネットを開けるとやはりドライブベルトが外れていました。原因はドライブベルトテンショナーの破損。プーリーが外側に飛び出してしまっていました。パワステポンプのプーリー(黄矢印)が見えています。

「タイミングベルト交換」とか「ドライブベルト交換」というと、ついベルトに目が行きがちですが、今回のようにベルトよりもベアリングのほうが先に寿命が来る場合もあるのです。

無残に切れてしまったドライブベルト(黄矢印)。
切れたベルトがパワステポンププーリーとカムシャフトプーリーに噛み込んでいました。

カムシャフトプーリーの奥にあるバランスベルトにまで噛んでいたらタイミングベルトもいっしょに止まっていたところ。危なかったです。ドライブベルトの切れ端があちこちに飛んでいたので入念に取り除きました。

タイミングベルトカバー内にゴムの破片が入っていると大変です。カバーを外し内部も点検します。(青字はメカニックからのコメントです)

ドライブベルト、テンショナーベアリング、アイドラーベアリングの新(右)と旧(左)です。

テンショナーベアリングの樹脂部分が熱で溶け、アイドラーベアリングの外周部分も熱で溶けていました。

黄矢印が内側のクランクシャフトプーリー。外側のベルトがバランスベルトで、内側がタイミングベルトです。タイミングベルトに比べるとバランスベルトの張りは弱めになっています。

走行距離が約37,000kmなので、すこし早めかもしれませんが、お客様とご相談に上、タイミングベルトとテンショナー等も交換することになりました。

SSTを付けて確認したところ、バランスシャフトのタイミングが狂ってました。ベルトが噛み込んだときに少し干渉したと思われます。タイミングベルト部にも破片が残っていました。これでひと安心です。

基本的な構造はアルファロメオのツインスパークエンジンと同様ですが、プラグは4本です。フィアット・バルケッタというべきでしょうか。
タイミングベルト、バランスベルト、テンショナーベアリング、アイドラーベアリングの新(右)と旧(左)。
カムをSSTで固定して上死点を出してバルブタイミングを正しく合わせて、新しいタイミングベルトを張りました。

当初予定していた点検を行いました。
エンジンは良いのですが、トランスミッションからオイル漏れがあります。クラッチを踏み込んだときに異音がするというお話だった件はクラッチのリンク部分のグリスアップで収まりました。

長く乗られるのであれば、クラッチ交換の際にミッションOHも同時に行うことをお勧めいたします。