MASERATI Quattroporte V6

走行58,000kmのマセラティ・クアトロポルテのリセットのご依頼をいただきました。

たしかにエンジンの元気がなく、ブースト計の針も12時あたりの白い部分までしか回りません。そこでインテークマニホールドを外してOリング交換から清掃、ホースバンド交換等を行い、ブーストソレノイド、プラグ、タイミングベルトおよびテンショナーベアリング、アイドラーベアリング、ボンネットアブソーバー等を交換します。

左の写真のボンネット裏のインシュレーター(グレーのスポンジ)も貼りかえるので剥がしてあります。

じつはインテークのホースが片方外れていたこともあって走らなかったのですが、エンジンルームにブローバイガスが噴出して真っ黒になっています。
インテーク(エア)とラジエター(冷却水)ホースを外したところ。
プラグを外しました。周囲が真っ黒なのがわかるでしょうか。

外したプラグです。

一応焼けていますが、カーボンも溜まっています。

タイミングベルトカバーを外しました。

インテークを外してVバンク部分の点検をしています。

黄矢印の下にスターターがあります。このゴムカバーは標準品ではないので以前インテークを外しているようです。

ただ、インテークを載せるときにバキュームホースを挟んでしまい、ホース(手でもっている部分)が破れていました。これもエンジン不調の一因でしょう。

余談ですが、インテークの6本の足の裏にはめる「Oリング」がきちんとはまっていなくてエアを吸ってしまうこともあります。正確に組み上げないとマセラティ本来の持ち味は発揮してくれません。

テンショナーベアリングとアイドラーベアリングを外して分解したところ。

ベアリングだけを左の新品と交換します。

新しいタイミングベルトを張りました。
テンショナーベアリングに力を与えるピストンが飛び出さないように(交換作業中)挿しておいたピンを抜きます。
インテークもきれいに清掃しました。6本の足の内側も出来る限り汚れを落としました。

インテークマニホールドの背面です。

黄色の丸で囲んだ3個のフランジユニオンは樹脂製。折れたり、割れたりすると過給がかかりにくくなったりするため、必要に応じて交換するのですが今回は問題なかったのでそのまま使用します。

ラジエターも外したので清掃、点検しました。

ファンのエッジは意外に鋭いので絶対に素手で指を入れないようにしてください。

インテーク、ラジエター回りのホースも洗浄中です。
インテークの下のホースバンドを増し締めタイプのものに交換します。

今回外したパーツたち。

口のところにあるのはラジエターのサブタンクです。これも割れる前に交換しないと水漏れを起こします。

古いタイミングベルトです。

一度交換されているので特にひどい状態ではありませんが、縦に擦れた跡がついています。

古いラジエターキャップです。

高価な部品ではないので、ルッソでは車検などの折に、問題があるようならば交換するようにしています。

新しいプラグを挿して、タイミングベルトカバーも閉じ、ラジエターホースまでつなぎました。

このあとインテークを載せてエンジンがかかり試運転しました。もちろん調子は良くなってブースト計のイエローゾーンまで回るようになったのですが、どうもパンチがいまひとつ。

メカニックが調べたところ、燃料のプレッシャーレギュレーターをいじってありました。

左の写真は別のクアトロポルテ(Evo.6)のプレッシャーレギュレータ(黄矢印)です。通常、矢印の部分は封印されているのですが、ここが破られて調整ネジが2回転ほど回してあったのを元に戻しました。エンジンの調子が悪いから圧力を下げてみたのでしょうか。

結果、全体にトルクが厚くなりました。

他にタイヤ交換も行いました。元のタイヤとおなじ MICHELIN Pilot Sportのフロントが205/55-16、リアが225/50-16です。やはりタイヤが新しくなると地面の当たりが柔らかくなって気持ちよく走れます。

充電電圧が下がってきたため調べたところ、オルタネーターに問題があることが判明したためリビルト品と交換することにしました。左の写真は交換後の様子。

マセラティはバッテリーを早めに交換することもオルタネーターを長持ちさせるコツです。

ぼろぼろになっていたボンネットインシュレータ(グレーのスポンジ)を張り替えました。
外装だけでなく内装もきれいにしたいとのご要望を頂戴し、いわゆるクリーニングでは限界があるため、ベージュの皮革部分(バックスキン部を除く)を塗装することにしました。

まずシートを外して汚れを落として下準備を行います。

汚れを落としてこれからスプレーで薄く塗っていきます。極力厚塗りはしません。シート以外の本革部分も可能な限り塗っていきます。サイドブレーキのブーツも外して塗りました。

ひと晩、乾かせば触っても座っても剥がれるようなことはありません。

これが塗装前の運転席。初めは艶がなかった革も皮脂などで艶が出てしまいます。
シートの皺が消えるわけではありませんが、皺の奥に入った汚れが見えなくなるために目立たなくなります。御幣があるかもしれませんが、肌色なのでちょうど化粧品のファンデーションのようです。

お手入れは、固く絞ったウエスで水拭きしてください。