2003 ALFA ROMEO 147 GTA

ランチア・デルタ・エボ1と147GTAではどちらが速いだろう?」

それを確かめるために147GTAを借り出して、おなじコースを走ってみることにしました。走行距離は1,700km。まだ新車の香りが残っています。ボディカラーはロッソアルファ。定番の赤です。エアロをまとって「やる気」を見せています。インテリアはボディカラーをイメージしたツートーンの革張り。シフトノブには6速まで刻まれています。

LUSSOを出発して名古屋IC西の本郷交差点を右折。広小路通の渋滞にはまって気づいたのが、エンジンのフレキシビリティの高さ。

2,000rpm以下の止まりそうな速度でもノッキングしないし、じわっと踏めば加速していきます。これにはたまげました。まるでATです。従来のアルファロメオでは考えられません。それにアイドリング状態でそっとクラッチをつなぐだけで発進できます。これだけトルクがあるとストップ&ゴーを繰り返す街乗りも楽です。

猿投グリーンロードに入って一般道よりはスムーズに流れるようになりました。3速あたりでいろんな踏み方を試してみましたが、2,500rpmも回っていればどこからでも加速します。スロットル・レスポンスも抜群。3.2リッターV6ユニットに鞭を入れれば、引き絞った弓弦から放たれた矢のように飛んでいきます。4速、5速とシフトすれば飛距離も伸びていきます。

グリーンロードの駐車場でひと休み。知らない人から見れば「ただのハッチバック」。それくらいのほうが気負いがなくていい。「でも、ちょっとちがうんだな」とひとりごちているくらいが控えめでいい。クルマも低い排気音でノーマルモデルとのちがいを主張しています。

国道153号線からいつもの県道に折れると、アップダウンを伴うワインディングが数km続きます。ペースを上げ、右へ左へと横Gを感じながらカーブを駆け抜けていきます。足回りも節度があって危なげなく、ブレーキも必要にして十分。ペダル配置も理想的。3,000rpm以上をキープするスポーツランではつねに臨戦体勢なのでハイペースを維持することができます。2速、3速と引っ張っていくときのエンジン音は刺激的。上り坂でもぐいぐい前に出ていきます。これならデルタに置いていかれることはないでしょう。

シートのクッションは固めで、左右のホールドもしっかりしています。山道を走って遊ぶくらいは十分対応可能。わたしは街乗りではアームレストが欲しくなるのですが、ステアリングの下部を持って、シート脇の張り出し部分を「肘置き」にできました。右側にアームレストがありますが、なにかと邪魔になるので使いませんでした。

デルタの加給装置を司っているのが風神なら、GTAには雷神が宿っているようです。思わず「雷神がリアカーを引いている図」を想像してしまいました。(想像が貧しい?)

エンジンとミッションと前輪で残りすべてを引っ張っているような感じ。2速で踏み込むとトルクステアが出ますが、駆動輪の空転防止装置 (ASR)を装備しているので、即座に破綻することはないでしょう。2速はローギアードですぐに吹けてしまうので、おいしいのは3速です。ぐっと踏み込んだときに背中を押される感覚は病みつきになりそう。

デルタには特有のリズムがあります。だらだら走るのではなく、ターボでメリハリを利かせてリズムに乗ることが大切。そういう意味でクルマを操る愉しみがあります。147GTAでは低回転からトルクがあって、そのまま高速域まで連れていってくれるので乗せられてしまいがち。そういう意味ではデルタのほうがマニア向けかもしれません。それでも両車ともドライブしていて愉しい。GTAのドライバーに求められるのは、過分なパワーをゆとりと割り切る理性でしょう。

オーディオはCDプレイヤー標準装備。欲をいえば低音が不足気味なので、デッキを替えて、BOSEサウンドシステムを切って、というマニアック路線に走る手もありますが、音にこだわらなければそのままでも十分です。ステアリングのコントロールスイッチも便利です。また、トランクをリモコンで開けられるのはファミリーユースには重宝します。ダッシュボードにカード入れやカップホルダーがついていたりと「現代風」装備もばっちり。

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あとで147GTAのスペックを調べたところ、

  • V型6気筒 DOHC 24バルブ
  • 3,179cc
  • 184kw(250ps)/6,200rpm
  • 300N・m(30.6kgm)/4,800rpm

    250馬力もあるんですね。それを147に載せたと。そりゃー速いわけだ。(納得)

    アルファロメオも時代の波のなかで、エンジンブロックやシャーシの共有など、さまざまな制約を受けつつ、ファンとしても「また変わってしまうのか」と寂しい思いもしてきました。それがここへ来てGTAの復活です。このV6ユニットは掛け値なしに素晴らしい。やっぱりアルファの魅力はエンジンです。

    なんといっても雷神が宿っているくらいですからシビれました。