LOTUS ELISE 340R (hisata)

ボディカラーはグレーとブラックでたいへん地味なのですが,なんとも強烈なデザイン.昆虫系ですね.色からするとカミキリ虫を思い出します.はっきり言って「ヘンなクルマ」です.今回は写真を多用してお届けします.

室内はELISE同様アルミ一色.バケットシートのブルーが奇麗です.しかしドアがありません.スーパー7よりも室内は広いのですが,ボディサイドが高いので乗り降りは面倒です.

メーターは向かって右が速度計,左が回転計.メーターの中央のボタンがハザード,シフトレバーの前に照明等のボタンが縦に並んでいます.これだけ!? ちなみに,スーパー7のサイクルフェンダーは動くのが見えますが,340Rのそれは運転席からは見えません.

こういうクルマに乗るときに困るのが荷物の置き場所.ひとりで乗るなら助手席に置けばいいのですがEワヤマさんといっしょです.するとメーターの向こう側にセカンドバッグくらいは置けます.ただ,長く置いておくと熱くなるので注意しましょう.

シートベルトは4点式が付いています.とりあえず2点止め(写真では助手席の右上と左下を止める)にしました.

これは助手席から運転席を写した写真です.メーターとボタン類の青い照明が奇麗です.でも,このメーター照明は暗くて文字が読み取れないんです.

LUSSOから豊田まで往復します.最初はEワヤマさんの運転.思い切って踏むから「おぉ速〜い」.頭の後ろからエンジン音が盛大に響いてきます.まるでボンネットを開けたまま走ってるみたい.不思議に思ってあとで見たらエンジンの真上がメッシュになっていました.道理でうるさいはずだわ.おまけに信号などで止まるたびにそこから熱気が襲ってきます.背後からモワっと来るのでイヤ〜な感じ.

ちなみにシフトパターンはふつうの5速です.いわゆるクロスミッションというものらしく,シフトアップしても回転落ちが少なく,いつでも踏めば前に出てくれます.こいつは楽しいです.

これもあとで気づいたのですが,ボディサイドは一部が「すりガラス」になっています.さりげなくお洒落です.

帰り道は運転を代わってもらいました.この写真はうしろのロールバーなのですが,中央でクロスしていて小さな三角ガラスがはまっています.(これがリアウィンドウ!?)

バックミラーはイタリア製オートバイのカウルに付いているものを流用しているとか.小ぶりでお世辞にもよく見えるとは言えません.

これが運転席から見たルームミラーです.×印のむこうにリアウィングが横に走っているのでほとんどなにも見えません.目視しようとうしろを振り向いてもなにも見えないし,車線変更などたいへん苦労しました.後方視界は最悪です.このルームミラーは「バックミラー」ではなく「バニティミラー」だと考えれば腹も立たないでしょう.

操作系は軽すぎず,重すぎず.ブレーキはアシストがありませんからチョンと足を乗せただけではダメです.踏んだだけ効きます.ペダルのむこうに蜂の巣状の穴が開けてあって,そこから熱気が流れてきます.走り出して1時間も経つと(10月の夜中だというのに)膝から下が暑くてたまりません.どうも助手席ではなく運転席に出てくるのはヒーターの代わりなのでしょうか.しかしフタを閉めることができないのは困りもの.

その熱源はフロントに入っているラジエターのようです.これもフロントのメッシュの下に見えています.が,そこに実際に手を入れるには六角ボルトを外さないとパネルが開きません.エンジンルームも同様で,手軽に開閉できるようにはできていません.

さて,写真紹介はこれくらいにして運転した感じをお話しましょう.

まずアイドリングがバラバラです.いまにもストールしそうでハラハラします.エンジンをチューンしてあるというからハイカムが入っているのでしょうか.

1速で軽くつないで2,000rpmを超えるまではパワーがありませんが,3,000rpmあたりからぐっとパワーが盛り上がります.だから発進後1秒間はモワ〜っとしているのですが2秒後にはカッ飛んでます.車重が700kg以下なんですって? そりゃ加速も強烈です.

さきほどお話したようにギアがクロスしているのでシフトアップしても回転落ちが少なく,踏めば加速してくれるからどんどんスピードが出ます.わたしはじきに怖くなって右足を緩めてしまいます.

それにしても車高が低いです.となりにランドクルーザーが並ぶと見上げなくてはなりません.大型トラックに追突したらボディの下に潜ってしまいそう.足回りは固いだろうから,路面の凹凸でもっと突き上げが来るかと思ったらそうでもありません.車重が軽いからショックも小さいのでしょうか.

国道153号線を走ったのですが,まっすぐ走っていても面白くもなんともありません.それでもスムーズに流れていればまだマシ.市街地を40km/h前後でゆっくり走っていると,2速ではうるさいし,3速ではノッキングしそうだし,走りにくいったらありゃしない.

交差点を2〜3回曲がっただけですが,曲がるときの感覚は独特です.Sタイヤを履いているというのもあるかもしれませんが,ステアリングを切ると自分を中心にあっけなく向きを変えるのです.普段ALFA164のような重いクルマに乗っているとカーブでは外に引っ張られるものと構えてしまうのですが340Rにはそれがありません.峠道を走ったら面白いでしょうねぇ.

でも,わたしが試乗したことのある初代ELISEと比べて特別速いかというとわかりません.とにかくエンジン音がやかましいので回転を上げる右足がひるんでしまうのです.そういう意味ではヘルメットを被ればちょうどいいかも.

乗りやすさ,扱いやすさはELISEのほうが断然優れています.340Rは街乗りには使えません.そもそも屋根がない(幌もない)から雨に降られたらお手上げです.また,340Rは短距離走者です.これで長距離走るとドライバーが先に参ってしまいそうです(苦笑).

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LUSSOまで戻ってきてEワヤマさんはそのまま340Rで帰宅されました.じつは「昼間は恥ずかしいから」と夜中に試乗することになったのです.実際はじめてガソリンスタンドに寄ったとき,通りがかりのおじいさんに指をさして笑われたそうです.

途中まで方角がおなじなので着いて走ると,意外に340Rのリアビューはかっこいい.信号待ちでリアをヘッドライトで照らすと黒いメッシュ越しに排気系が丸見えで,すごくメカニカル.

うしろから見るとペタっと低くて横幅が広く見えます.セダンの座席から見ると340Rのドライバーは頭のてっぺんしか見えません.

しばらく行くと東山のワインディングコースに入ります.お〜い,そんなスピードにこのクルマで着いていけるわけないでしょ?(笑)

一見エグいクルマですが,見慣れると快感かも.いまどき珍しい硬派なクルマ.ライトウェイトスポーツはいい.ある意味でフェラーリよりも面白い.でも実用性ゼロ.お値段が高いのが玉にキズだけどスペシャルモデルだから仕方ないか.

屋根なし,ドアなし,サイクルフェンダーということで「現代のセブン」と呼ばれるようですが,ちょっと違うように思います.リファイン,リメイクといったものではなく,まったく別の個性の持ち主です.どこか「人間臭い」セブンに比べて,340Rは「機械臭い」のです.それが時代の違いだけではないように思うのです.

セブンと340Rで唯一似ているのは「割り切りの良さ」でしょうか.そういう意味でLOTUSは健在です.