2000 ALFA ROMEO GTV 3.0 V6 24V 納車整備レポート (2005/6)

ショールーム(グースネック名古屋)に遊びにいらしたE-wayamaのお友達がGTVに乗られることになりました。

グースネック名古屋でご購入いただいたおクルマもすべてルッソでメンテナンスしています。弊社にとって、グースネック名古屋が販売部門で、ルッソがサービス部門なのです。

この車両はディーラー整備を受けてきたのですが、その作業チェックも含めてリセットすることにしました。

ブラックボディとレッドレザーインテリアは人気の組み合わせ。

3リッターV6エンジンを6速マニュアルで乗ります。トルクがあるので街乗りも楽で、しかも踏めば速い。どうやら奥様の通勤車となる模様です。

2000年式、走行41,000km弱でタイミングベルト未交換なので、ルッソへ運び込み、タイミングベルト、テンショナー交換、プラグ交換、オイル交換等の納車整備を行います。

ディーラー整備にありがちな「指示なき交換はしない」という弊害が各所に見られます。ディーラーの営業さんは「できるだけ安く上げたい」し、メカニックさんは作業時間を切られているから「余計なことはしたくない」という悪循環。結局だれもクルマのことを本当に考えてはいません。

ですから今回の納車整備の過程で「ここも換えたほうがいい」と交換部品が追加になることもあります。ルッソでは、インテークを外したならホール類やバンドをついでに交換しておくといった予防措置を講じます。放っておくと水や燃料が漏れるかもしれないという不安を見過ごしにはできません。ここがディーラー整備とルッソ整備のちがい。結果、ルッソのほうが整備コストが高くなるかもしれませんが、まちがいなくクルマは良くなります。この点を理解してくださる方のためにルッソはあります。

まずバッテリーの点検。トランク内のスペアタイヤを外してカバーを開けると、右奥にバッテリーが納めてあります。まだ交換する必要はなさそうですが、このあとの作業のために(念のため)バッテリーの端子を外しておきます。
タイミングベルト交換のためには準備が必要です。

エンジンルームの左右にある黒いカバーから始まって、エアクリーナー、インテーク、カムカバー等を外していきます。

インテークが外れて、もうすぐカムカバーも開きます。
タイミングベルトが見えました。

タイミングベルトを交換することによって、現在のエンジン内部の状況が確認できるという意味もあります。

各バンク2本ずつカムシャフトが現れ、ドライブベルトも外され、タイミングベルトを外す準備が整いました。

カムカバーを開くことでエンジンオイルの劣化なども確認することができます。

手前バンクを真上から見たところ。
外されたインテークとカムカバー2枚。
右フロントタイヤを外すと、奥にクランクシャフトプーリーが見えます。
下から見上げると、エンジンのうしろ側(左)にオルタネーター、前側(右)にコンプレッサーがあるのがわかります。
これは別件ですが、左フロント部のパワステパイプとエアコン低圧パイプが黄矢印の部分で干渉しています。黄色っぽいパワステパイプが鉄製で、白っぽいエアコンパイプがアルミ製なので、振動により弱いエアコンパイプが削れてしまいます。
このGTVもエアコンパイプが削れてきていたので干渉しないように対策しておきました。
エンジン右側のベルトやテンショナーを交換するにも隙間が狭いため、エンジンマウントを外してエンジン自体をすこし左に傾けて隙間を広げて作業します。いま左前のミッションマウントを外しました。
正しいバルブタイミングにきっちり合わせてタイミングベルトを交換するにはカムを固定する必要があります。ベルトを張っている間にカムがすこしでも動いてしまったらバルブタイミングが狂ってしまいます。

1番シリンダー(奥バンクの右端)のピストンの上死点に合わせた状態で、専用工具(SST)を使って4本のカムシャフトをそれぞれ1ヶ所ずつ固定していきます。

良い状態の24Vを何台知っているかが作業のクォリティを左右します。

奥バンクのカムシャフトの左端に円盤がついています。これはカムシャフト回転角センサーです。
タイミングベルト、アイドラーベアリング、テンショナー、カムシャフトプーリーを外しました。
これでひと通り分解したことになるので、周囲のオイル汚れ等をきれいにします。きれいにしておけば、もしもオイル漏れがあったときにすぐに気づきます。

汚れを落とすパーツクリーナーやウエス、潤滑剤(グリス)などの消耗品が納品書に「ショートパーツ」として記載されます。

今回用意したパーツ。

左上からカムカバーパッキン2枚、その下がプラグホールパッキン6個とイリジウムプラグ6本、右にあるのがタイミングベルトとテンショナーです。

古いタイミングベルト(左)とドライブベルト(右)の裏側。

ドライブベルトも交換することにしました。

タイミングベルトのアイドラーベアリング2個もガタが大きいので交換します。
新しいタイミングベルトを張りました。

そもそもタイミングベルトはカムを介して適切なタイミングで吸排気バルブを開閉するためのパーツ。バルブタイミングが狂ったり、きちんと閉まらないことがあると即エンジントラブルにつながります。ここで注意しなければならないのは、タイミングベルトは整形の具合や保管状況などにより微妙に形や長さが異なるということ。ですから、一度適切な張力でベルトを張ったうえで調整が必要になるわけです。そのときにカムを固定しておけばバルブタイミングが狂う恐れはありません。カムシャフトプーリーを空回りさせて(理想的な状態で)適切な張力でベルトを張り、そのうえでプーリーを固定すればよいのです。

外した部品たち、5年間、4万km、お疲れさまでした。

タイミングベルトよりもドライブベルトのほうがすこし長いです。

今度は組み上げていきます。いまインテークを取り付けているところです。
エンジン回りは完成しました。

イグニッションを捻る瞬間、自分たちが再調整したエンジンがどういうふうに息を吹き返すか、緊張しつつも楽しみで、結果「これならお客様にも喜んでいただけるにちがいない」と思えることがメカニックの喜びです。

そのままリフトアップしてエンジンオイルとミッションオイルを交換します。

左の写真はエンジンオイルを抜いているところ。

入庫した時点で、営業とメカニックによるテストドライブおよびリフトアップを行っています。その過程で細かい凹凸を通過するときにフロントからコトコトっと異音がするので、原因となるスタビライザーリンクロッドを交換することにしました。

上が新品、下が古いもの。両端のボールジョイント部分を手で動かすと、まだそれだけで音が出るほどではありませんがグリスが切れてきているのがわかります。放置すると次第に音が大きくなっていきます。

右フロントのスタビリンクを交換したところ。左側も同様に交換しました。

他に、拭き残しが見られるワイパーブレードも交換しました。

運転席側(右)のドアからカタカタと音がするので内張りを外して原因を調べたところ、ウィンドウレギュレーターのモーターにスポンジが貼ってありませんでした。以前モーター交換したようです。振動で音が出ないように対策しておきました。

お客様にお納めするまえにできる限りの不具合や不安を払拭することが納車整備だと考えています。

換えてあったマフラーでは排気音が大きく「静かなほうがいい」というお客様のご希望にそってノーマルに戻すことにしました。
純正に戻して通常の排気音になりました。
納車整備完了です。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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