いままで他の164のことはあまり気にしなかったのですが,レポート車はどうも程度が良いわけではないらしい.というわけで最終型の164に試乗してみることにしました.与えられた時間は翌日の夜まで24時間.

さて,164に対する印象は変わるでしょうか.

■ 1997 ALFA ROMEO 164 Super 12V

164Lと比べてヘッドライトまわりなど外見がマイナーチェンジされているだけかと思ったらエンジンも(構造はおなじでも)別物だとか.ダッシュボードまわりもウッドステアリングだったり液晶表示が増えたりとすこし変わっています.なにがいいって,まだ新車の香りの残っているのがいい.

ファブリック地のシートが硬いせいか,164Lよりもヒップポイントがすこし高い.室内もきれいで気持ちいい.オートエアコンの温度調整や風量は液晶に表示されるんですね.吹出口もちゃんと切り替えできるぞ.(笑)

走り出してびっくり.超スムーズ!

アクセルにチョンと爪先をのせただけで反応するし,ブレーキのタッチもいい.ステアリングも軽いし,ATミッションのシフトショックも小さい.164を煮詰めていったらこうなりましたって? いいじゃないか.これなら立派な乗用車です.

深夜,グリーンロードを回って帰ることにしました.わたしがこれまで試乗したアルファロメオの中でいちばん快適でした.エアコンもしっかり効くし,静かだから音楽も楽しめるし,ウッドステアリングの感触も悪くない.グリーンロードの終点で折り返すつもりがそのまま足助まで足を伸ばしてしまいました.

このS12Vなら300万出してもいい.レポート車の164Lは150万って言ってたけど,こうなると100万+α程度かな.あの個体は5年間に酷使されて痛んでいます.

あくまで比較の問題ですが,164Lが「サンダル」ならS12Vは「革靴」.
S12Vが「働き盛りのアルファ」ならば,164Lは「定年後のアルファ」.「まだまだ働ける」とはいってもやはり「若い者にはかなわない」わけです.

S12Vは新車価格が500万円近いから新車で買おうとは思いませんが,今回わたしは己を知りました.わたしは新車(高年式車)が好きみたい.(笑)

■ 気分次第のレポート

足助での帰路,ゆるやかな上り坂で2速ホールドして踏んでみました.4,000rpm くらい回すとエンジン音が響いてきます.ゆっくりと右足の力を入れたり抜いたりしてみたのですが「いまいちだな」.よくも悪くも乗用車のエンジン.無理して回してもおもしろくない.

軽いワインディングで鞭を入れてみたのですが(レポーターの腕の限界もあって)怖かった.高速道路や田舎道を流しているほうがいい.

クルマを受け取ったときにEワヤマさんにリアシートに乗せてもらったのですが「こりゃショーファードリブンは似合わないな」

室内の横幅はあるのに前後が狭いんです.運転席が近いのが気になる.わたしの感覚では,リアシートでくつろぐには前後がゆったりしていなければなりません.運転席から遠いほうが乗っていて恐怖感が少ない.だから高速道路でもSクラスは落ち着きます.

古いSクラスから164Lに乗り換えたときは「フロントは短いし,ピョコピョコと重厚感のないクルマだな」.一方,前後にド〜ンと長いよりも短いくらいのほうがスポーティに感じる.なにと比べるかによって評価なんて変わりますし,着眼点を変えれば「アルファに比べるとベンツって色気がない」のです.無責任なようですがどうにでも言えるのです.

S12Vは夏の昼間でもエアコンが効くし,室内もきれいだから「これなら上司でも乗せられる」.164Lはエアコンが効かないだけでアウトでした.これが「サンダル」と「革靴」のちがいですね.

気軽に付き合える手頃なアルファとしてはS12Vは最高だと思います.

164LからFLを飛ばしてS12Vに試乗してみた範囲での話ですが,これから1年のうちにATのアルファに乗るなら(今後登場予定の)166でも156(AT仕様)でもなくて164がいい.

くどいようですが新しい164はイイです.ひたすら安上がりを狙うのもいいけれど,高年式を狙うのもアリだと思う.S12Vの中古は少ないかもしれないけれど予算と用途に応じて選んでください.

■ エピローグ

わたしはまた大事なことに気づいたのです.

あくまで足としてのクルマなんか欲しくない.そういうニーズがないのだから当然かもしれないけれど,わたしは「運転していてワクワクする」クルマがいい.そうじゃないと自分で持つ意味がない.

わたしにとって公道を運転するのはストレスを伴うのです.面白くもないクルマのために神経をつかいたくない.シトロエンBXのように,ATでも実用車でも「楽しみ方はある」とはいえ,それは思わずワクワクするものじゃない.

とくにFUNではないけれどGOODなセダン.それがレポートを通じて感じた164でした.

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どんな理屈を並べるよりも限られた時間のなかで思い切り楽しんだ人が勝ちです.ここで尻込みしていても退屈な日々が続くだけ.

あくまで自然にさりげなく,アルファロメオで自分を彩ってみませんか?