果たして164はおいしいのか.「アルファロメオの先代フラッグシップだから」と,おいしいと思い込んでいるだけなのか,本当においしいのか.あなたの答えは?
- ■ 164はおいしいのか
「オーナーではない人の評価とオーナーの評価はちがうはずだ」というのがこのレポートの大前提.164QVオーナーのtannoさんからのお便りをご紹介します.
番外編楽しんでおります。92年式のQVである僕の164は液晶がないのですが、同じような症状がでています。スピードメーターはまったくあてになりません。普通に動く時もあれば、上へ下へとふれまくる時があります。メーターの明かりもその辺りだけ薄くなっています。これは修理してもまた壊れてしまう部分なのではと感じています。あまり気にしないで乗る方が良いだろうと思い乗っています。前期型も後期型も電装系の弱い部分は一緒なのかもしれませんね。そういえば最近スピーカーから音がでたりでなかってりします。hisataさんの言う通り、164がおいしいかは僕にもまだわかりません。納車後約半年ほどたち、細かな不具合はでてきました。代車で国産セダンに乗ったりすると、快適で維持費もかからなそうと感じます。でも、それに乗り換えようとは思いません。同じくらいで新車で買える国産車にも。164の魅力ってなんでしょうね。僕も知りたいです。
164の魅力にはふたつあると思います.ひとつはスタイル,ボディデザインで,もうひとつは雰囲気.
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164がおいしいかどうかはクルマそのものの魅力だけでなく,決め手はオーナーの味覚というか,気の持ちようだと思うのです.頭で理解するのは簡単だけど,心で納得するのはむずかしい.
実際,わたしの164に対する気持ちがボクスター試乗を境に変化しました.それまでは「悪くはないし気に入っているんだけど,いまひとつ愛着が湧かない」クルマでした.そうするうちにあちこち不具合が出てきてしまったものだからモチベーションは一気に下降線をたどるところだったのですが,気分を持ち直した理由はふたつあります.
ひとつはボクスターから164に乗り換えて「ボクスターもいいけれど,164も悪くないじゃないか」と見直したこと.もうひとつはEワヤマさんに「心配はあるでしょうが冷静に向き合ってください.記録が残る事がレポートならばトラブルは重要な話です」と言われて気を取り直したことがあります.
それまでは「普段の足」くらいにしか思っていなかったのが,いまは「大事にしてやろう」と思うようになりました.164との距離が縮まった感じ.
164はきれいなボディをまとった洒落たセダンなのですが,運転してみると雑な操作を受け入れない危うさがあります.スイッチを乱暴に扱っているとたいてい壊れます.丁寧に扱っているつもりでも勝手に崩れていったり,その日の気分で動いたり動かなかったりすることがあります.高級装備よりも壊れない電気部品を使ってほしいと願いつつ,その危うさを愛しく感じることがあります.
そんなのんきなことを言っていられるのは,いざとなったら助けてくれるショップがあることと,事前にある程度覚悟ができていて,その覚悟の範囲からすればまだ大事件は起きていないからです.だから多少の不具合があっても164を楽しむ余裕があります.
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過去のモデルとはいえ164は1990年代のクルマですからそんなに古くはありません.それでも現在市販されている自動車に比べると,めずらしく異国情緒の残るクルマです.166や156はもちろん155も既に失っていた「雰囲気」を164は持っています.これが冒頭で挙げた164の魅力のうちのひとつです.気取っているけれど,どこか欠けてる(抜けてる)イタリア車らしい能天気なムードといったら叱られるでしょうか.(笑)
計算づくで小奇麗にまとめられたクルマではなく,一見雑然としているけれども「その時代の,その国の文化」を伝えるクルマを好む人はふつうの国産実用車には興味が湧かないのではないでしょうか.国産車のすべてがそうだとは言いませんが,質感とか高級感というものを付加価値として足したり引いたりするのが目についてイヤになることがあります.それに「動けばいいっていうものでもないでしょ」というのもある.ひとことで言えばおもしろくない.おもしろくないのには「他人とおなじクルマはイヤだ」というのもある.
自分の事情が許す範囲でクルマにこだわってみたら164が視界に入ってきた.話を聞いていたら値段も手頃だし,多少のリスクはあるとはいえ,なんとか維持できそうだ.というわけで手に入れる.
国産実用車が醤油味だとすれば,さしづめ164はオリーブ油が隠し味.SUPER 24VにはQVのようなピリっとした刺激はないものの,好みにあえば飽きが来ないでしょう.
わたしは164はおいしいと思います.
正確には164をおいしいと思うようになってきた.このレポートの番外編が続いているのがなによりの証拠.クルマの楽しみ方は色々あっていいんだと,わたしの味覚が変わってきたのでしょう.
わたしの感覚では,164は飛びつくようなクルマじゃなくてスルメみたいに噛んでいるうちに味が出てくるクルマ.峠やワインディングを飛ばして楽しいクルマじゃないけれど,高速道路は快適かつ楽しい「ちょっとハイソなクルマ」.まさに「お父さんのセダン」に打ってつけ!(笑)
結局わたしにとって「おいしいクルマ」とは,新しい自分を発見するための触媒なのです.