このレポートからDD6を知るためのキーワードを抜粋してみました.ここからダブルシックスの姿が見えてくるでしょうか.
- ▼1 英国セダンに乗りたい
- セダンを極めてみたい
- ALFA164の次はジャガーに乗ってみたいわたしとしては「DD6は普段の足として使えるのか」「12気筒は必要なのか」「ジャガーに貫禄負けしないか」(苦笑)など確かめてみたいのです.
- ▼2 空想の翼
- 発進するときの様子は,大きな鳥が翼を広げてフワーっと舞い上がるような感じ.「走る」というより「流れる」ような乗り物です.
- ▼3 ドキドキした理由
- ドキドキした理由は2つ.ひとつはボディサイズ.もうひとつは価格.
- やっぱりMINIを思い出します.
- DD6は存在感があります.高級車らしい威厳がある.メッキでピカピカしているけれど軽薄じゃない.わざとらしさがない.シブいクルマです.
- ▼4 シリンダー狂想曲
- 6気筒より8気筒,8気筒より12気筒のほうが「上級」で「高級」みたいなイメージがあるけれど「過ぎたるは及ばざるが如し」.実際は6気筒で十分じゃないのかな,という素朴な疑問があります.
- いままで乗ってきたクルマとは異質です.「きびきび走る」という言葉とは無縁の世界.「走る」というより「流れる」「漂う」みたい.その重量感のおかげで逆に気が「重い」のです.
- V12はいつも平然とヌルヌル回っています.
- ▼5 退屈ハイウエイ
- ジャガーは猛獣だと思ったのですがすごく大人しい奴です.人間に馴れているのでしょうか.
- ビジネスでもクルマを使うわたしとしては「なんて乗りにくいクルマなんだ」「こんなスピードならMINIでも出せるぞ」.
- ▼6 空白の3,000回転
- のんびり走るのも悪くはないのです.時間さえ気にしなければ.
- 加速感はないのですが,これなら十分速い.ドキドキしました.それに4,000rpm回すとV12の唸りも響いてきます.
- ▼7 ダブルシックスの法則
- このV12には恐ろしく躾のいい猛獣が隠れています.普段は決して爪を見せたりしません.それを引き出すにはちょっとコツがあったわけです.
- なぜ,そこまでエンジンの性格を知りたいのか.それは納得して乗りたいからです.そうじゃないと心から楽しむことはできないし,クルマに対しても失礼だと思うのです.
- ▼8 都内通勤編〜朝
- DD6は上品で当たりは柔らかいですが中身の「濃い」クルマです.醤油でいえば「たまり」です.
- シリーズIIIのボディデザインは趣があっていいですね.ジャガーだとかデイムラーだとか言わなくても,そこにいるだけで存在感があって,なおかつ走り去る姿も優雅です.
- ▼10 人をもてなす心
- DD6も切れないだろうと覚悟しておなじ道を通ってみたら「あれ,切れるじゃないか」.
- 「164だとここでロックするんだよな」というところを通り過ぎてもうすこし切れます.これは意外でした.この「もうすこし」が有難い.
- 音楽をかけずに走らせてみました.すると風の音が聞こえるのです.軽くアクセルを踏むとフーっと風が吹いてきます.そういう音がするのです.なんだか本当に空を飛んでいるような気分になります.
- ダブルシックスには人をもてなす心があります.
- 上手に付き合うことができれば他では得られない満足を提供してくれるクルマがここにあります.
- ダブルシックスにひとりで乗っているのはもったいなくて,誰かを乗せたくなります.
- ▼11 最高のクルマ
- まだ結論は出せませんが,ボディサイズと燃費を気にしなければダブルシックスは非常にいいクルマです.
- 3,000rpm以下でフワーっと流すだけのクルマだったら「退屈で年寄り臭いクルマだ」と一蹴していたかもしれませんが,踏めば応えてくれることがわかったので,わたしの評価はぐっと上がりました.
- ▼12 ドライバーズ・サルーン
- DD6に乗っていると「古臭い」と逃げ出したくなるときと,その古臭さを好ましく思うときがあります.
- ひとつ言えるのは,DD6は東京のような渋滞の多い街で走らせるクルマではありません.STOP&GOの繰り返しはDD6に気の毒です.V12はDD6の「個性」であって「無駄」ではないと思います.
- ▼13 V12の系譜
- わたしの基準からするとDD6のV12は非常に静かで滑らかです.でも無音じゃない.この英国紳士はポーカーフェイスを気取っているようですが,ちゃんと表情があります.それを読み取ってあげるのもドライバーの楽しみじゃないでしょうか.
- 重さと燃費を気にしなければダブルシックスはいいクルマだと思います.
- ▼14 デイムラー・マジック
- 夢から覚めたらDD6もふつうのクルマになっちゃいました.
- DD6はべつに特別なクルマじゃありません.
- 最初は緊張感もあるし,12気筒という無言のプレッシャーもありますから,街中でもゆっくり走っていました.でも馴れてくるとさほど神経をつかわなくなります.気づくと「いつもの走り方」になっていました.極論すればMINIでもDD6でもおなじです.
- つまりDD6は都内でもふつうに足として使えるということです.
- ▼15 夢のつづき
- 「ふつうのクルマ」かもしれないけれど,DD6でのんびりと都会を流す時間もいいものです.ちょっと贅沢してる気分に浸ることができます.一流ホテルのカフェでお茶を飲んでいるような感じかな.(笑)
- このレポートでわたしが余裕をもってDD6を楽しめるのは大体2日に1度しか乗らないというのもあるかもしれません.毎日決まった時間に着かなければならないとしたら疲れると思います.毎日時間に追われる状態で乗るクルマじゃない.すくなくともわたしは避けたい.
- 個性的なクルマはいろんな発見があるからうれしい.そのクルマを通して自分の価値観が見えてくるのもおもしろい.人に媚びるような中途半端なクルマはだめですが,確固たるポリシー(志)を持ったクルマは自分を映す鏡になります.
- ダブルシックスは背筋をしゃんと伸ばして乗るクルマです.
- ▼17 ビッグセダン
- DD6を最初に見たときは「リアシートのほうが快適だろう」と思いましたが,いまは運転席のほうがいいです.乗せてもらうより運転していたほうが楽しい.
- ワクワクすることはないけれどドキドキできるクルマです.
- ▼18 トラフィック・ジャム
- DD6はゆったりとあったかいクルマです.
- 渋滞でも平気です.ALFA164ではイライラしますが,DD6はダイジョーブです.空港の搭乗口ロビーでは30分でも苦痛ですが,VIPルームなら2時間くらい平気なのとおなじです.
- DD6の室内は居心地がいい.コーヒーもノートパソコンもないけれど,コーヒーの代わりにCDを聴きながら,パソコンの代わりに運転しながら時間を過ごします.移動するという意味ではカローラでもDD6でもおなじなのですが,わたしはDD6のほうがいい.豪華だとか上等だとかいうより,乗っていて心地いいから.それがきっと「人をもてなす」ということなのでしょう.
- DD6は外国映画に出てくる執事のようです.いつも物静かで忠実.主人が快適に過ごせるよう心を砕く.DD6は「仕えるクルマ」です.
- DD6はわたしのお気に入りになりました.
- ▼20 トランクを開けば
- 雰囲気は楽しめても運転はつまらないだろうと思っていました.ボディが大きいのも気が重かった.ところが刺激を完全に取り除いてはいませんでした.非常に行儀がいいけれど,ヤンチャな運転にも応えてくれる茶目っ気がありました.
- ▼21 乗り心地
- そのままの状態のクルマを楽しむコツは,細かいことは気にしないこと.
- 粗探しするよりも好きなところを探したほうがいい.
- 緊張してワインディングを走らせるのもいいけれど,くつろいで市街地を移動するなかにも楽しみを見つけることができます.サーキットや峠を攻めなければ意味がないようなクルマじゃない.ただ停まっていても運転席に座っていることが心地よいクルマ.ダブルシックはそういう類のクルマです.