マセラティを乗りこなす心構え クルマにはそれぞれ味があり,その愉しみ方も人それぞれです.そして1台で何通りもの愉しみが味わえるクルマこそが,乗っていて愉しいクルマなのです.
MASERATIというと「内装が豪華で照れくさい」「汚しそうで大変」「敷居が高そう」とよく聞きますが,たかが自動車です.乗ってしまえば,あとはその人となりです.乗りこなすために必要なのは,自分自身の思い入れだけです.
クルマのシートだと思うから豪華すぎると感じるだけで,ソファーだと思えばいいのです.良いソファーに座っているんだと思いながら運転していると,いつもとちがう風景が見えてきます.ゆったりした気持ちで室内を見回すと,イタリアの貴族が求めた空間が理解できたりします.きっと中世の馬車にもこんな雰囲気があったのだろうなんて思いませんか? 豪華さの中にある暖かさにまで気がつけばもう自分のものになっているはずです.
街角にたたずむ MASERATI を見ていて,外見の格好良さだけでは出せない雰囲気を発見してしびれてしまいました.どことなくワルそうな感じがするのですが,近づくとそれが素性のちがいだとわかる感じがたまらないんです.こんなクルマは今どき,ちょっとありません.
だから結局,オーナーの思い入れなんです.MASERATIだからって別にかしこまる必要はなく,ふだんの生活の中に自然に溶け込ませることが大切なのです.
MASERATIに乗せられているのではなく,MASERATIに乗っているという認識が乗りこなすことに繋がっていくのです.そうですね.できることなら30代から40代で楽しむのが良いのではないでしょうか.《Eワヤマ》 Nov.1996