口の悪い人たちが、最初の"S"をとって "HAMAL" などと呼ぶ車のドライバーズシートに収まりながら考えてみた。見慣れたダッシュまわり、各操作系は他のモデルと大差ない。ただ、シフトノブに刻まれた6という数字が違う車だと教えてくれるだけ。
ところがエンジンを目覚めさせてその違いを感じた。V6に比べてV8はすこし甲高くメカニカルノイズも多い。わくわくさせる雰囲気満点で自分を抑えるためにウォーミングアップにつきあう。
十分暖まった頃にすこしアクセルをあおってみる。V6よりもシリンダーの数は多いのにアクセルのツキはいい。クラッチはGHIBLIといい勝負、ということは他のたいていの車よりは重い。
ミッションオイルを暖めるためにのそのそと動かしはじめる。車がOKというまで3000をリミットに10分ほど流す。
いままで「GHIBLI のほうがいい」と思っていたことを忘れてしまいそうなくらいアクセルのピックアップがいい。3500回転からの音もいい。私はいい音に弱いんだと改めて教えられた。
エンジン特性は超ピーキー。これは全モデルに共通。3000より上は右足の動きにすかさずついてくる。325頭の馬を、自分の右足で一挙に走らせるかと思うと倒れそうな最高の感覚。街乗りではもの足りなくなり高速に向かう。合流する加速でGHIBLIとの違いをまざまざと教えられた。何といっても伸びがいい。V8サウンドにも乗せられてあっという間に加速させてしまう。この車は高速道路で最高に楽しいことを知って久々のX20kmオーバーを楽しんでしまった。
高速を下り、車と自分をクールダウンしながら街を走らせていると、リアフェンダーの張り出しが妙に気になりSHAMALの生息エリアはここにないことを感じた。
HAMALとは良くいったものだ。もちろんトラブルにHAMALのではなく「SHAMALにHAMAった」のです。(December 1996)