1997 ALFA ROMEO 155 2.5 V6

当初、ミッションから異音がしていたので、ミッションOH、クラッチ交換の「リセット」を施したV6(ブイロク)です。その後、ボディのお化粧直しも受けてきれいになりました。

以前、ALFA155 TS 8Vに新車から5年、乗っていたのですが、V6はちょっと乗ったことしかありません。今回、一日借り出すことができたので印象を書き記しておこうと思います。

156を見慣れた目に155はちょっと古く見えますが、直線的なデザインは逆に新鮮です。このV6はスポルティーバボディなのでフロントフェンダーが張り出しています。8Vに乗っているときはちょっとうらやましかったものです。

左のドアを開けて乗り込むと、まずシートがいい。クッションが固めで適度にホールド感があり、布シートなのですが表面が滑りにくくなっています。運転中にお尻がズレることはありません。MT車は両足でペダルを踏み込む関係で腰の位置が決まっていないと運転しづらいのです。

キーを捻ってエンジンをかけるとボーっと低いエグゾーストが響いてきます。マフラーのテール部分を替えてあるのでアイドリングでも勇ましい。でも近所迷惑を心配するほどでもない「節度あるチューニング」はわたし好みです。シートだけでなく、ステアリングも気に入りました。握りやすいし、革のすべすべした感触が心地いい。

走り出すと、シフトが軽く入るので気持ちいい。信頼できるメカニックさんに組み直してもらったという安心感もあります。クラッチの切れとつながりも文句ナシ。8Vは低速トルクが細いため、発進時にストールすることが多々ありましたが、V6はトルクがあるため坂道発進も容易です。また8Vに比べて低回転でもぎくしゃくしないので3速だけで街中を流すこともできます。つまり、億劫なときはシフト操作をサボることも可能です。(笑)

信号が赤から青に変わると、ヴォン、ヴォンと軽く煽ってクラッチミートして発進。これはMT車ならでは。こういう乗り方をするのは久しぶりです。LOWから2速、3速とシフトアップ。ふつうに街乗りしている分にはとくになにも起こりません。でも、前方がパッと開けたので踏みながらシフトアップしていくと、どんどんスピードが伸びて、気がつくとオーバースピード状態。圧倒的加速というほどじゃないけれど、気持ちよく伸びていきます。8Vとは楽しむ速度域が多少異なります。

メカニックさんにいわせると「すこしヘタっている」そうですが、足回りもまだいけそう。もっとバタバタするかと思ったら意外にソフト。ステアリングも軽い。左ハンドルのMTとしては運転しやすいほうではないでしょうか。

「昼間は道が混むかなぁ」と思ったのですが、せっかくのチャンスなので足助(あすけ)まで走ることにしました。

名古屋ICから東に向かう道路で、2005年の「愛・地球博」のためのリニアモーターカー(東部丘陵線)工事で車線規制が続いています。高架って、上を走っているときはよいのですが、下を走ると圧迫感があります。

建設の進む「愛・地球博」の会場予定地を通り過ぎると「猿投(さなげ)グリーンロード」に入ります。ゲートで300円払って、ポンポンとシフトしていくと、じきに後続車が見えなくなりました。片側1車線なので前の車に行き当たったらそこまで。流れに従って走るしかありません。「どこまで自由に走れるかなぁ」と思ったら、前に誰もいません。マイペースで走ることができるのはじつに幸せなことです。

3,000rpmまではふつうのクルマですが、のびのびと回るV6ユニットが快い。そして4,000rpmを超えるとヴォ〜っとエンジン音が響いてきて表情が一変します。3速 4,000〜5,000rpmあたりを右足で行き来するのがいちばんおいしいところ。6,000rpm超までストレスなく吹け上がるエンジンと、滑らかに加速していく感覚に、胸がスカっとします。

「こいつはいいぞー」とV6ユニットと戯れていると、料金所出口で前車に追いつきました。これは「V6を楽しむ時間を与えてやろう」という神様の思し召しだったのかもしれません。

グリーンロードを抜け、国道153号線を左折、足助方面へ向かいます。山に向かう、田舎の国道です。まさにカントリーロード。名古屋は、市内から1時間も走れば海も山もあるので、気軽にドライブを楽しむことができます。

国道では周囲にしたがって、のんびりと流します。足助の香嵐渓を過ぎ、国道から左に逸れた、交通量が少ないワインディングでちょっと踏んでみます。

V6はTSに比べて「鼻先が重い」と言われるようですが、わたしの運転レベルではまったく気になりません。たとえば155のV6が気に入った場合、雑誌などの(他車との)比較記事って意味があるのかな、と疑問を感じます。一旦クルマを選んだなら、その特性に合わせて、個性を引き出してやることにこそ醍醐味があります。

「8Vは4気筒で、V6は6気筒だからV6のほうが上」とは言えません。個性の差です。8Vはワインディングがおもしろいですが、V6は多少カーブのある高速(中央高速など)がいいかもしれません。V6はTSに比べるとカンタンにスピードが出るのでくれぐれも理性を失わないように。

程度の良い155が少なくなっている中で、このV6は良いです。思わず欲しくなってしまいました。わたしはアルファロメオが好きだということを再認識しました。8VもV6も、どちらのエンジンも秀逸です。

このV6のように8万km近く走ると、メンテナンスにすこしお金をかけてやるべき時期になるので、その時点で155を手放すオーナーが多いのです。わたし自身もそうでした。そういった155を引き継ぐなら、そのままの状態では安心して乗れないと思ったほうがいいでしょう。タイミングベルトさえ交換してあればいいとは限りません。信頼できるお店から買うようお勧めします。

Eワヤマ(岩山)さんいわく「このクルマが良いのは、修理したからじゃなくて、ルッソのスタッフの想いが詰まっているからなんです」。