SHOT 111 - 2005/11/10

1972年生まれのロールスロイス・コーニッシュ、33歳です。

さすがに貫禄があります。巨大です。でも2ドアなんですね、これが。V8エンジンで排気量は 6.7リッターです。わたしのBMW735の2倍じゃないですか。ボンネットを開けてもピンと来ませんでしたが、リフトアップして下から見るとエンジンとミッションの大きさがよくわかりました。

17歳のE32 (BMW735)に乗るようになって、ちょっと古いクルマに親近感を覚えます。たとえば20年前のクルマに今のクルマと同じ性能やフィーリングを求めてもあまり意味がありません。「その当時」を上手に楽しめばいいと思うのです。

E-wayamaライブラリで当時の価格を調べたところ、当時コーニッシュの新車は1950万円。Dino 246GTの900万円の2倍ちょっと。いまでいえば360モデナの2倍ちょっとだとしたら4000万円。いい線ですね。今も昔もロールスは特別高価なクルマです。

大きなドアを開けて、高めの床に載っているシートに座ると、ちょっと古い英国車の雰囲気が漂っています。ドアが2枚だとか、木目のメーターパネルとか、リアウィンドウがヒンジでリア側が外に開くところとか「こりゃ巨大化+高級化したローバー・ミニだな」。(失礼)

ダッシュボード中央のキーシリンダーに鍵を挿して右に回していけばセルが回ってフワフワフワーっとエンジン始動。右膝のあたりにあるT字のサイドブレーキレバーを戻して、ステアリング右上から生えているシフトレバーを右にDレンジまで倒すと発進します。アクセルはそぉっと開けていかないとフォンっと急に動いてしまいます。走らせてみると、とにかくすごく上品。ステアリングは軽いし、急な操作を嫌います。カーブではカクンと軽くロールしますが、極力ボディを揺らさないように優雅に走らせたい。

ダイムラーのダブルシックスがなにを目指したのかわかったような気がしました。このロールスロイスの乗り味と相通じるものを感じます。ただ、縦目のベンツも上品ですから、この時代の高級車に共通するものがあるのかもしれません。

シートが高いのでフロントノーズもよく見えます。その先端に女神のマスコットが翔んでいます。スリーポインテッドスターともリーピングジャガーとも気分がちがいます。ロールスロイスというブランドに媚びるつもりはないけれど、ある意味で頂点を極めたクルマには独特の佇まいがあります。このクルマの何が人を惹きつけて評価されてきたのか。その点にすごく興味があるのです。

貫禄と上品さ。それがわたしの第一印象です。誰がどう見ても「ロールスロイスでしかない」押し出しの強さと、ステアリングを握った者にしかわからない繊細さ。現代のロールスがどうなのか、ちょっぴり興味があります。