非力なクルマに乗っていると「どうしてみんな後ろから急っつくんだろう」と不思議だったのですが164に乗ってわかりました.簡単にスピードが出るクルマにみなさん乗ってらっしゃるんですね.やっとわかりました.(遅い?)
- ■ いいクルマってなに?
- わたしが乗ることになった164を眺めて「いいクルマですよね」.
これからわたしが付き合っていくクルマが一体どんなふうなのだろうと思いを巡らせている横でポンと太鼓判を押したわけです.あの一言がこのレポートの流れを決めました.
「いいクルマ」というのは「いい天気」とおなじくらい軽いコトバ.
だって,ある人にとっては「いい天気」でも,花粉症の人にとっては「最悪の天気」かもしれない.クルマだってオーナーの価値観次第だと思うわけです.
一般に「いいクルマ」というのは「工業製品として優れていること」を求められます.性能,品質,耐久性ともにトップクラスでなければなりません.そういう意味では164が「いいクルマ」であるはずがありません.
ここではそんな通説に抵抗してみたい.
最初から用意されている「いいクルマ」なんてたいしたものじゃない.「いいクルマ」って,自分で工夫して想像力を働かせて作り出すものではないでしょうか.
たとえばこの164です.機関は好調ですがあちこちでガタガタ,ゴトゴト,バタバタ.言われてみればボディパネルだって波打ってる.だから車両価格だって100万円代前半.そりゃウンチクを並べれば体裁を繕うこともできるのでしょうが,それって本当じゃない気がする.
うまく言えませんが,わたしはまず乗ってみてクルマの声に耳を傾けます.そうして自分の気持ちとすりあわせるのです.
164ってアルファのフラッグシップだというけどそんなクルマじゃない.
ドアが4枚あるセダンだけどファミリーカーじゃない.
ベンツでもボルボでもジャガーでもない.
世の中を斜めから見るための乗り物(ビークル)なんです.無理に信じ込んだり,理論武装することなく,自分だけの「いいクルマ」を作り出すには,安心して乗ることができるようにメンテナンスが施してあることが前提条件.そのうえでどんなふうに乗っていくかはオーナーの自由.わたしはその自由をたいせつにしたいのです.
納車のお茶会のあと,レストランの駐車場を出て片側2車線の道路をUターンするときに(大きめに回ったつもりなのに)曲がりきれませんでした.
164はきっと「曲がったこと」がキライなのでしょう.
- ■ ガタガタでもピカピカ
- 毎日の通勤ではリトモやBXでも通った裏道も走っています.
名古屋で道路工事は年中行事でして狭い通り抜けもあるのですがとくに不便は感じません.STOP & GO の繰り返しをいかにスムーズにこなすか.それがクルマの立ち居振舞いを決めるじゃないんですか.できればきれいに振る舞いたい.
たとえば交差点を曲がり切ったところでアクセルはそっと入れます.BXのように無造作に踏み込むと暴れます.エンジンのパワーをうまく制御することと,ステアリングを早めに切り始めることがコツでしょうか.
思ったよりエンジン音は静か.アクセルを踏み込むとフルフルフルっと回転が上がっていきます.Eワヤマさんは「ベルトも交換してありますから回していいですよ」と言ってくれるのですが(MTだったら低いギアで引っ張ることもできますが)ATでは「回す=飛ばす」ことになるので怖い.いずれ高速道路ででも試してみましょう.
電動ファンを含めたエンジンルームからのメカニカルノイズが大きいし,シフトショックも思ったより(BXより)大きい.ドンっというショックではないけれどシフトされたのが「イヤでもわかる」.
ボディサイズと車重からくる乗り味は155などよりは明らかに重厚なのですが,足がバタつく感じは155とまったくおなじなんです.「さすがアルファ!」と笑ってしまいました.
トルクがあるから運転は楽だけど,とくに乗り心地がいいわけじゃない.そこそこ大きいから存在感はあるけれど「このエンブレムが目に入らぬかぁ」と威張るほどのものじゃない.
164には「優等生じゃない気軽さ」があります.
信じてもらえないかもしれませんが hisata はそもそも優等生タイプなのです.でも優等生ってつまらない.周囲の期待通りにしか行動できないのは窮屈です.だからこそ優等生タイプの「いいクルマ」に魅力を感じないのかもしれません.
家族や荷物を乗せるためではなく,クルマのもつ雰囲気をひとりで楽しみながら街を流す.不良になりきれない不良っていうのでしょうか.そんな雰囲気が164にはあって,そこがわたしは好きなのです.