連載をひと区切りつけて「小休止」に入り,なにも考えずにお気楽に164を楽しむのも悪くはないのですが,伝えるべき発見がないというのも退屈になってきて,あれこれ拾い集めてみました.もしもお時間があれば番外編にお付き合いくださいませ.
- ■ わんぱく坊主と164
- 「おなじSuper 24Vでも初期型のほうが後期型より味があるんです」というEワヤマさんの言葉がずっと気になっていたのです.わたしの24Vは初期型です.「味がある」ってどういう意味なのでしょうか.
164の各モデルはすこしずつ改良されていったから初期にはゴツゴツしていた部分が後期にはスムーズになったりしています.高年式の最終型なんてあまりにフツーなのでびっくりするくらい.
Super 24Vを乗り比べたわけではないのですが,初期型はステアリングを回すとき,アクセルを踏み込むとき,コーナーでのサスペンションの動きなどに「おや?」と思うことがあります.べつに動きがおかしいとか不安だというほどのものではないのですが「ふ〜ん,164ってこういうふうなのね」とインフォメーションを感じるわけです.
たとえば革シートの手触りだってひたすら滑らかなのがいいかというとそうじゃないはず.クルマそのものだってどこか「引っかかり」があったほうがいい.刺激を完全に取り去ったら無味乾燥な乗り物になってしまう.
164でいうところの「味」というのは「機械らしさ」でもあります.機械のインフォメーションを感じつつドライブするのが,今あえて164に乗る醍醐味のひとつではないでしょうか.
★ ★ ★ 実用性と趣味性の両立.これがいつも悩みの種です.
ホイールベースが長いほうが直進安定性が高いとか,そんな理屈はよくわかりませんが,高速道路は155より164のほうが安定しているし,長距離も疲れにくい.
ボディが大きく重くなった分,強力なエンジンを載せて帳尻を合わせる.そうするしかないのはわかりますがパワーでごり押しするのも芸がありません.アマノジャクなわたしはLOTUS ELISEのようなライトウエィトスポーツで対抗したいところですがオープン2シーターではニーズに合わないのです.
これは私見ですが,ELISEのようによほど個性的なクルマでない限り,エンジンとミッションがクルマの個性を決めます.164でいえばSuper(3.0 V6 DOHC 24V+AT)とQV(3.0 V6 SOHC 12V+MT)は好対照.スペックに反して前者は実用的,後者のほうが官能的なのです.
わたしの知る限り「これがアルファのエンジンだ」「こいつはFUNだ」と思わせてくれるのは4気筒では155TS 8V,6気筒ではSZ/RZと164QVです.残念ながらATのSuper 24Vは「パワフルで実用的なエンジン」でしかありません.踏んでもワクワクしないのです.唯一の美点である超高速域では怖くてワクワクする余裕などありません.
走らせる楽しさを求めるならば,わたしは155(TS8V/TS16V/V6)をお薦めします.キビキビ走らせるには164は重いのです.
★ ★ ★ そう,わたしにとっての趣味性とは「ワクワクすること」.それがなければ残るのは実用性だけ.先日所用で164に人を乗せてわかったのです.Super 24Vは「コンパクト・リムジン」です.
客人を迎えるならば164 Super 24Vはアルファロメオの最高級セダンです.
日本では多少大柄な人でも窮屈な思いをせずに済みますし,トランクも容量があります.かといってボディは大きすぎないから街乗りでも大丈夫.もちろん「164の曲げ方」を修得している必要はあります(笑).
「運転する」とか「走らせる」とかいう表現はふさわしくないかもしれません.
できるだけ快適に人(自分を含めて)と荷物を「運ぶ」のがSuper 24Vの役目.国産ATセダンに乗ったときに「自動車は自分を運ぶ道具」だと感じたのですが,これはSuperに乗っているときも感じます.Dレンジで「勝手に」走るんですから.
じつに偏った見方です.164が聞いたら怒るかもしれませんが(笑)トルコンのおかげでこちらから積極的に働きかけようという気になりません.不幸な関係です.
それじゃ「いますぐSuper 24Vを降りたいか」というとそうじゃない.164は今のわたしの隠れ家.ATは大嫌いなくせして,都内でMTは疲れるしストレスが溜まることもわかっているから身動きが取れないのです.
逆にいえば,フルATのセダンの中では164は値段も手頃で洒落ている.シンプルなデザインながらイタリア車らしい華があります.すくなくともわたしが乗ってもいいと思うくらいには魅力的なのです.(贅沢な話)
問題はただひとつ.164 Super 24Vを優雅に楽しめるほどhisataは大人じゃないということです(笑).