現在の愛車 ALFA ROMEO 164 はルッソに預けて,入れ替えにM3を受け取りました.M3レポートのはじまりです.

FIAT RITMO, CITROEN BX, ALFA164L, DAIMLER DOUBLE SIXに続く「10年物レポート」第5弾をお届けします.久しぶりにMT車にじっくり乗れるので楽しみです.あ,都内ではつらいかな?

■ ドイツのハチロク

ピカピカのBBSホイールがちょっと気恥ずかしいけれど,真っ白なM3はかっこいいです.ルッソを出て東名高速の名古屋ICに向かいます.

左ハンドルの5速マニュアルなのですが,シフトがレーシングパターン(左手前が1速)になっています.他はサンルーフが手動でチルトアップするくらいで,操作について特に変わったところはありません.ちょっと古いドイツのスポーツクーペです.

高速に乗って様子を見ながら流します.4,000rpmも回すとボーっとうるさい.セダンにしては騒々しい164だって,これに比べれば静寂の世界.騒音は暴力.うるさいと疲れます.「これが東京まで続くのか」とちょっと憂鬱になったりして.

でも,思ったよりまっすぐ走るんです.変な言い方ですね.音はうるさいけれど,走り方が軽やかなんです.ハンドリングが素直というか,そう,軽やかなのです.アルファロメオは突き上げもあるし,路面が荒れるとハンドルを取られがちで,高速走行では結構神経をつかうのです.その点,このクルマは楽です.直線性がすごくいいわけではないけれど「あっちだ」といえばそっちに向いて進みます.素直だという点で「ドイツのハチロク(トヨタAE86のこと)」とはEワヤマさんの弁.

足回りはすべて社外品で組み直してあるそうなので,本来のM3がどうだったかはわかりませんが,固すぎず,柔らかすぎず,ちょうど良いあたりではないでしょうか.

ただ,全体に古さというかヤレを感じます.ドアだってバタム!ではなく,バタッという感じ.古くても911のドアはしっかりしていますが,BMWは劣化するみたいですね.75,000kmからM3を楽しめるかどうかというのがこのレポートの主眼だったりするわけですから,それでもいいのです.多少古くても,安くて気軽に乗れればそれでいい.コンディションが良ければ,持っている価値もあるだろうし,こういうクルマは少ないから愛着も湧くでしょう.

さて東名クルーズに戻りましょう.

2.3リッターの4気筒でしたっけ.アルファ155TSよりは力があるとはいえ,思ったより非力です.高速を巡航するなら164(3リッターV6)のほうが速い.M3だってスピードは出るはずですが,音と振動が増していきますからアクセルを踏みつづけるのが億劫なのです.おまけにセンターコンソールからジーっと盛大な異音がするから何かと思ったらシフトノブが振動して立てる音が反射しているのです.シフトノブに手の平を当てると音が消えます.これじゃまるでマラカスを振っているようなものです.

EワヤマさんがCDデッキをつけておいてくれたので,CDを聴きながら走ることにしました(感謝!).音楽を聴くことができて,エアコンが効けばとりあえず文句はありません.さすがに高速を走っていればエアコンは寒いくらい効きます.

途中,左カーブがあって,164ではアクセルをすこし戻す場所なのですが,M3では踏めるので驚きました.遠慮がちに踏んでみたのですが,軽くロールしたまま挙動は安定しています.「こりゃなにかちがうぞ」.わたしがこれまで乗ってきたクルマとはちょっとちがうようです.そのあたりをレポートしていきたいですね.

静岡を過ぎたあたりから,M3の騒々しさとパワーフィールにも馴れてきて,騒音が意識から薄れていきました.速度を上げるとそれなりに振動が来るけれど,タイヤがはねているかといえばそうじゃない.接地感はあるし,微妙な操舵も効きます.レカロのシートもサイドサポートが効いていてラクチン.ドライビングポジションも違和感がありません.イタ車とはちがいます.

「なるほどねぇ,みんなこういうクルマに乗ってるのかぁ」.

御殿場を過ぎてからの下りカーブでも踏めます.ここは時々うしろからSLなどがかっ飛んできてビックリするのですが,ドライバーは別段不安を感じていないのかもしれません.だとしたら,このM3も含めて「乗せてもらう」部分も大きいかもしれません.

どこかで後続車が途切れたらブレーキテストをしようと思っていたのですが結局チャンスがありませんでした.

脱線しますが,きちんとセッティングされたスロットレーシングカーはコーナーリングも安定しているので走らせるのがすごく楽なのです.一方,トレッドが狭くて暴れるクルマは運転に非常に神経をつかいます.このM3が特にすばらしいというわけでもないでしょうが,暴れるのをなんとか押さえ込んで走らせるイタリア車とは対照的です.

東名用賀ICを下りて,世田谷の裏道を窓を開けて走ると勇ましい音が響いてきて気持ちいい.わたしのなかでなにかが目を覚ましたような気がします.