このままレポートを終わるのは寂しいので,ワインディングを走りに行くことにしました.

■ M3の棲む場所

試乗コースは名古屋市内から東へ,名古屋IC→トヨタ博物館→愛知青少年公園→猿投グリーンロード→足助です.夕方から雨がぱらついているので山奥まで行くのはやめましょう.どしゃぶりに遭うかもしれませんから.

M3とアルファロメオ75の2台で行くことにしました.どちらも直列4気筒のFRで車格もおなじ.91年式の75を代車としてお借りして気に入ってしまったので,75も連れていくことにしたのです.

ルッソを出て,途中レストランで夕食を済ませ出発.Eワヤマさんが75,わたしがM3に乗り込んで...「あれ,バックはどこだっけ.暗くて見えないぞ.あ,1速はこっちだった」.シフトパターンを思い出してM3が先に駐車場を出ました.窓は左右とも全開.エアコンをつけなければエンジンの非力さも気になりません.

トヨタ博物館を過ぎると沿道から明かりが消えていきます.愛知青少年公園を過ぎるとほとんど真っ暗.急に心細くなってきて,自分がいま運転しているクルマが唯一の仲間だと意識します.燃料計を見て「これだけあれば○○までは行って帰れるな」と計算するのです.

グリーンロードの料金所で300円払って出口券を受け取り,後続の75を待ってアクセルを踏み込みます.

1速から2速,3速.すこし(わたしとしては)ハイペースで流してみます.グリーンロードは適度なアップダウンとカーブがあるので好きなのですが,道路の幅がさほど広くないのと対向車も多いので無理は禁物.

スピードは出るけれど,これくらいの緩やかなカーブではM3には物足りない.もうすこし曲がっててほしい.スピードを出したいわけではありません.

グリーンロードを抜けて突き当たりの153号線を左折し足助方面へ向かいます.あたりは真っ暗.両脇は田んぼなのか,カエルの鳴き声が聞こえてきます.10kmも行けば香嵐渓に着いてしまいます.そこで引き返すつもりだったのですが,それでは面白くもなんともありません.どうしようかと考えながら運転します.

香嵐渓でハザードを出して停車.Eワヤマさんに「153号線をもうすこし上ると信号のある交差点で左折してグリーンロードまで戻る道があるのでそっちへ行きましょう」.

いつもは裏道の県道に入るところを国道を選んで左折.そこからしばらくタイトな上りコーナーが続きます.これです,これ! M3はステアリングに忠実に向きを変えていきます.じつに素直なクルマです.もちろん限界はありますが,わたしが出す程度の速度であれば,信頼できそうなブレーキと合わせて no problem でしょう.

しばらく行くと国道を外れて瀬戸方面へ左折します.さほどタイトなカーブはありませんが,だれもいない峠道を2台で駆け抜けていきます.ヘッドライトを上向けておかないと道筋がよく見えません.対向車が来るたびに下げたり上げたり.あとでEワヤマさんは「星がきれいでしたね」なんて言ってましたが,それは後続車だからできたことではないでしょうか.かといってEワヤマさんに先に行ってもらうと着いていくのに苦労しそうだからなぁ.

「あれ?」.道が変わってると思ったらきれいになっています.数年前に工事していたのが開通したようです.しばらく下っていくと元の道に出て,グリーンロードの終点に戻りました.そのまま料金所を通ってすぐのところにあるパーキングエリアにクルマを停めました.

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ガランとした駐車場に白いM3とモスグリーンの75が並んでいます.

Eワヤマさんは「ずっとうしろからM3を見ながら考えていたんですけど,やっぱり4気筒っていいですね」.そう,わたしはV6より直4のほうが好きです.アルファのV6はいい感じなのですが4気筒のツインスパークエンジンに長く乗っていたのでその印象のほうが強いのです.

このM3が148万円,75が88万円.「これくらいの値段で楽しめるクルマがいいですよね」とEワヤマさん.

M3を300万円で買ったりしたらそれ以上お金をかけることができないけれど,これなら余裕があるでしょうから(ほんとうに好きな人は)エンジンOHにお金をかけることもできるはず.一方の75は走行距離がまだ41,000kmなので,たとえばあと2年乗るのに40万もみておけばいいだろうとのこと.すくなくともわたしにとっては魅力的です.

その後75に乗り換えたのですが,スピードを出すと最初は怖かった.アルファ特有のロールもあるし,M3より重心が高いのです.

ドライバーが操作を誤らなければ,M3は決してまちがいを起こさない.

それが今回,ワインディングを数十km一気に走ってみて感じたことです.夜の峠道でカーブに合わせてステアリングを切りつつアクセルを調整するのですが,多少思い切って突っ込んでも修正が効きます.アルファで同じことをするのは(上手い人ならいいですが)わたしは怖いです.

名古屋市内まで戻ってきたわたしたちは名古屋ICから東名阪自動車道に乗ったのでした.