前回,レポート車とおなじスロットカーがあれば,と探したのですが,残念ながら1/24プラモデルには見当たりませんでした.ベンツに比べるとBMWは少ないのです.

M3レポートの最終回をお届けします.

■ ワクワクしたい

このレポートの主旨は「走行7万5千kmの10年物を日常的に使いながら,運転する楽しみと所有する悦びがあり、できればお金もかからない.そんなクルマとしてM3が成り立つのかどうか検証したい」というものでした.

わたしの結論から書きます.

好みにもよりますが,希少性も手伝って「所有する悦び」はあると思います.「運転する楽しみ」がすこし低いのはエンジンのパフォーマンスが落ちているせいです.走るという点における総合的なポテンシャルは高いでしょう.「できればお金もかからない」というのは予期せぬラジエター交換によって覆されました.

もうひとつ「日常的に使いながら」という点は,夏の昼間は使えませんでした.クーラーが追いつかないのです.Eワヤマさんいわく「応援団が学ラン着たまま応援する甲子園を思ってしまいました」.(笑)

E30のM3がすべてそうだということではありません.正規輸入されたM3はエアコンもちゃんと効くそうですし,エンジンの調子は個々にちがいます.あくまでレポート車はそうだったということです.

それじゃ,このレポート車はよくないのかというとそうではなくて,ニーズと思い入れ次第だと思います.わたしなら,夏の昼間を避けることができない事情があれば対象から外します.逆に,セカンドカーとしてならば,そして予算が許すならエンジンOHをして大事にしていきます.クルマの状態がある程度はっきりしていれば,そこを出発点として考えることができます.見た目はきれいでも何が出るかわからない中古車が怖いのです.

結果的にM3の都内でのレポートを1週間で終わらせたことについて,Eワヤマさんはこんなことを言っています.

あまり長い時間を乗り込まなくてもそのクルマの特性とか面白味とかが分かるようになってしまったのですね、hisataさんは。なんだか自分がそうなので良く分かるのですがわくわくが長く続かない状態ですよね。そのクルマが持つ面白さを味わえるのはこんな場所ではないかと容易に想像ができてくる。それ以外の場所で乗っているのは移動の為とかという必要性に思えてしまう。クルマ道楽は最終的には自分が一番楽しいと感じる乗り方を楽しめるクルマで思いのまま運転する事なのではないかと最近感じています。

そう,わたしたちはワクワクしたいのです.

M3はよくできたクルマだと思います.足回りのちゃんとしたクルマはよく走るし,よく曲がるということを教えてくれました.アルファ75のようなクセもなく素直なものです.

ところが,わたしがワクワクしたのはM3ではなく75でした.

M3はワインディングを思い切って走らせたときにスリルでドキドキしました.純粋に走りたいのであればM3は良きパートナーになってくれるでしょう.わたしにとっては「ドキドキ」よりは「ワクワク」のほうがポイントが高いのです.優等生よりは腕白坊主のほうが好みに合ってます.

そういえばダブルシックスでもドキドキしましたっけ.わたしがドキドキするのはスピードを出したときのようです.サーキット走行でもレーシングカートでもコーナーに突っ込んでいくのは苦手です.恐怖が先に立ってしまう.イチかバチかの危険な賭けは実車ではなくスロットレーシングでやることにします.(笑)

ドキドキは心臓に悪くて「早く終わってほしい」という部分があるけれど,ワクワクは「ずっと続いてほしい」という将来に対する期待があります.でも,Eワヤマさんの言うように(わたしのような素人でも)いろんなクルマを体験する中でワクワクが続かなくなっていきます.ですから,たとえワクワクが続かなくても,せめてドキドキが欲しいと思ってしまうのです.何の刺激も発見もないモノに興味は持てませんから.

★ ★ ★

10年物を手に入れて楽しむには維持費の先読みが不可欠なのですが,どうしても読みきれない部分も(今回のラジエター破損のように)あります.ユーザとして,万一のことがあっても迅速に対応してくれる体制(ショップ)を確保しておくことが欠かせないでしょう.

一方,10年物の魅力は一般に,値段がこなれていて,探せば掘り出し物に出会える可能性もあること,乗り出し費用が安ければ好みでアルミホイールを奢ったりできること,前オーナーよりも上手に,壊さないように乗る楽しみなどもあります.

当時は脚光を浴びたモデルでも10年も経てば程度のいい個体も減ってきて,ほとんど見向きもされなくなったり,新車当時は高すぎて手が出なかったクルマが安くなって魅力が出てくることもあります.そんなクルマを掘り出してきてさりげなく楽しむ.これですよ,コレ!

それがほんとうの贅沢だと思うのです.