BX REPORT No.2
リトモと選手交代でBXが我が家にやってきました.毎日の足として乗りながらレポートしていきたいと思います.オドメーターは5万kmを超えたところです.

■ 勝手な思い込み

本で調べてみたところ,BXというのは従来からのファンには「シトロエンらしくない」と不評だったにもかかわらず,日本でも(ディーラーの価格戦略も功を奏して)1万台以上売れたとか.従来のユーザーには不評でも,新しいユーザーを獲得して地位を得ていく.他メーカー車でも繰り返されていることです.シトロエン車としては歴代ダントツの売上げだったからいまでも時々街で見かけるんですね.

わたしが初めて出会ったシトロエンは Xantia V-SX でした.現在の愛車であるアルファ155を購入するまえに,当時発表されたばかりの Xantia に試乗したことがあります.MTに乗りたかったこともあってATの Xantia にはいまひとつピンと来ませんでしたが,室内も明るくゆったりしていて好感を持ちました.赤信号でブレーキを踏んで停止していて,青でブレーキから足を放すとお尻がピョコンと跳ねるのがおかしかった.

つぎに出会ったのは2CV.これはシフト操作に戸惑ったこと,エンジンがいつストールするかとビクビクしていたことしか覚えていません.自動車の歴史を感じました.

わたしにとってBXは3台目のシトロエンなのです.とはいえフランス車にはあまり縁がなかったため,よくわかっていません.この機会にじっくりと付き合ってみたいと思っています.

前回BXの第一印象について書きましたが,いまわたしがシトロエンに対して抱いている先入観や偏見を白状してしまいます.それがレポートを終えるときにどう変わっているかを確かめてみたいのです.

シトロエンは,親会社であるプジョーのシャーシやエンジンを使いながらも,独自の足回り(ハイドロ)を持っていることに興味があります.それがユーザーにも広く受け入れられてきた秘密を知りたい.「実用的なハッチバックボディに乗り心地のよさ,それにほどよい趣味性をあわせもったクルマ」というのが一般の(好意的な)評価のようですが実際はどうなのでしょうか.

先のレポート車であるフィアット・リトモはつい右足に力が入ってしまうクルマでしたが,BXって対照的.「そんなに慌てずにのんびり行きましょうよ」というカンジ.ただし乗り心地については生理的に合う,合わないがありそう.「フランスに高級車はない」と聞きますが,それはなぜでしょう? フランスではクルマはステータスにはならないのでしょうか.あるBXオーナーから「くだらないところがいきなり壊れる」と聞いたことがあります.どうなることやら.

「BXのシートをレカロに換えたい」などと言ったら熱心なシトロエンファンから石が飛んできそうですね.無知と無礼の段は平にご容赦ください.

■ 開放的移動空間

運転席にパッと乗り込んだ印象は「開放的」.日本車やドイツ車とは明らかに異なります.

先日アウディ80に乗ってみたら狭いんです.ボディサイドがルーフに向かって絞ってあるから横方向の圧迫感がつよい.運転席は「はまり込む」ような感じでリアシートも狭苦しい.たしかカリーナEDにも似たような印象を受けたことがあります.同クラスのアルファ155のほうが室内は広い.広ければいいというわけではありませんが,このあたりにもラテンとゲルマンのちがいがあるのでしょうか.

実用車である以上,中途半端にスポーティさを気取るよりも,クルマの居住空間は開放感のあるほうが好きです.セダンやハッチバックが本来どうあるべきかと考えればBXは理想的なカタチをしていると思います.家族を乗せることがあるならばドアは4枚あったほうがゼッタイに便利ですし,個人的には直線的なボディデザインが好きなんです.

今度は質感です.

ダッシュボードは一面プラスチックで,シートはファブリック.およそ高級感とは無縁です.しかし安っぽい感じはありません.かつてのBXオーナーに伺ったところ「87年式からダッシュまわりも変更を受けて品質が向上した」そうです.11年経ったいま見ても「こういうものだ」と割り切ってしまえば,つぎの瞬間から気にならなくなります.各部の取り付けや操作感はリトモに比べてはるかにしっかりしています.イタリア人よりはフランス人のほうが几帳面なのでしょうか.とくに壊れそうな感じはしません.

一見しただけではわかりませんが,ボンネットフードとリアのハッチゲートもプラスチック(FRP)製なのです.その割にハッチゲートを開けるのに力が要るのは(TRSにはオプションである)リアスポイラーのせいでしょうか.このスポイラーのせいで後方視界が遮られるんです.こんなもの要らないんじゃない?

偶然,深夜の輸入車紹介番組を見ました.徹底的に主観を排除した商品カタログ,いえ,あれはイメージビデオ付き広告です.必ずしもユーザーが知りたいことが伝わってきません.

また月刊Tipoに連載中のコミック "BOLTS and NUTS" でBXが紹介されています.わたしが見せてもらったのは98年5月号.ここではBXのメンテナンスには(トラブルが起きないかぎり)首を突っ込まないつもりなので,その方面に興味のある方はどうぞ.このホームページも含めてメディアは上手に利用しましょう.

おなじクルマに乗っても感じ方は人それぞれ.BXを「これで十分」と思う人,「これじゃ物足りない」と思う人.「おもしろい」人,「つまらない」人.他にもシトロエンやBXを中心にしたホームページはあるようなので,ここではあくまで hisata がユーザーの視点で「BXと付き合っていく様子」をお伝えしていきたいと思います.