BX REPORT No.13
先日Eワヤマさんと会ったときのこと.「BXレポートで読者に伝えてもらいたいことの70%はもう書きましたね」.残りの30%って一体なに?

■ シアワセの足し算

英語は好きだけど算数は嫌い.それなのに算数の教科書を渡すんです.いずれ血肉となるだろうことはわかります.わかるけれど退屈でした.

それでもBXという教科書を毎日繰ってきて「足し算」を覚えました.

これまでわたしはクルマを「引き算」していました.理想とする基準は当然100点なのに「○○の調子が悪いから」と減点しては憂うつな気分になっていたのです.また電動ファンが止まらないことに比べればルームランプが点かないことなどたいした問題ではないのですが,不調な部分はその重要度とは関係なく気にしていました.

ところがリトモやBXといった「10年物」と付き合ってみて基準が変わりました.まず「とりあえずちゃんと走る」というだけで50点.細かいことは最初からあきらめてるから息継ぎしたり,アイドル不調があっても「クーラーが効く」だけで20点あげちゃう.

たしかに「10年物」を引き算していたら赤点続出で落第してしまうという事情もあります.わたし自身,以前はちょっと古いクルマに乗っている人たちの趣味を計りかねることがありました.新車から乗っているとか,昔から憧れていたというのであればともかく,内外装ともに古びたクルマを買ってなにが面白いんだろうってね.

それまでわたしは虫眼鏡でクルマを見ていたのだと思います.だから細かい傷が目について仕方ない.それが5メートルくらい離れて全体を見るようになって,個々のクルマがもつ雰囲気,たたずまい,走らせたときの持ち味などに興味をもつようになったのです.

時が経てば内外装がヤレてくるのは当然です.シートが多少色褪せても,そのクルマの個性が色褪せなければすなわち魅力的なクルマなのです.リトモもBXもキャブレターに多少問題を抱えていて乗りにくさがありました.でも我慢できないわけじゃないし,クルマの用途を思えば致命的な障害じゃない.クルマの健康状態にあわせて付き合えばいい.

クルマを見上げたり見下ろしたりすると引き算になって,地面に座ってクルマにもたれていると足し算になるのです.クルマってその程度のものじゃないのでしょうか.

そう考えたとき,ふっと肩の力が抜けてBXとも長く付き合っていけそうな気分になったのでした.

■ ヴィンテージカー

ここからは hisata の空想(夢想)の世界です.

自分のためだけのクルマを持つことができるなら,いつかヴィンテージカーに乗ってみたい.何年物からヴィンテージと呼ぶのか知らないけれど,ちょっと古くて独特の味わいをもつクルマ,そんなクルマにさりげなく苦労せずに(笑)乗りたい.

古いカー雑誌を繰ってみました.シトロエンでいえばBXよりもCX,ベンツでいえば縦目かな.XJ−6も雰囲気がある...いや,ちょっとちがうかな.BMW635csiってシブイ.こういうクルマを厭味なく乗りこなせたらカッコいいな.

わたしはメッキが好きみたい.ここに挙げたクルマはよく見るとバンパーやらヘッドライトや窓枠などにメッキパーツが使われています.以前わたしがローバー・ミニを買ったのも(当時は希だった)メッキバンパーに惹かれたのでした.その後,日本でもメッキ仕様車が出てきましたがとってつけたようなのはだめ.美しくない.

新車ってだれでも興味をもつし実際たくさん売れるもの.だけど「新しいから」「流行ってるから」「高級だから」といった理由がくっついたクルマにあえて背を向け,手前勝手な理屈をでっち上げて自分だけの1台を選ぶ.まさに快感であります.

最近のようにダイムラーとクライスラーがくっついたり,VWがロールスロイスに色目を使ったりすると「これからの新車はどうなるのだろう」と心配になったりしませんか? すでに日本で登録されたクルマであればそういう心配は不要です.

そうでなくても先行き不透明な世紀末.趣味のクルマ選びでまで不安な思いをしたくありませんよね.ヴィンテージカーはどちらかというとマニアのものだし,下手に手を出すと痛い目に遭う.でも(個人的には)ルッソを巻き込むことができればメンテナンスの心配は最低限で済むはず.

hisata が実際に旧車にハマっていくかどうかはわかりません.どんなにカッコいいクルマでも面倒なのは嫌いですし,苦労させられるのは願い下げです.クルマのために生きるのではなく,わたしと一緒に生きてくれるクルマがいい.

この先どんなクルマと出会うのか.縁もあれば運もある.だから人生っておもしろい.