BX REPORT No.14
毎日BXに乗っているのですがトラブルもなく,クルマにも慣れてしまったものであえてお伝えすることがなくなってきています.そのために前回から2週間ほど過ぎてしまいました.

■ 軽薄なBX

リトモはやんちゃな「遊びクルマ」だったけれど,BXはふんわり「実用車」.乗って楽しいのはリトモで,BXはラクチンだけど退屈でした.

ところが長く付き合うにはリトモよりBXのようです.最初は酔いそうで不安だったBXも慣れてしまえば楽なんです.毎日BXに乗っているところに先日ベンツのSクラスを運転したら,これが重厚なエンジンに重厚な乗り心地.大型客船とクルーザーくらいのちがいを感じました.

BXって「軽い」し「薄い」んです.

日本語の「軽薄」とは意味がちがいます.シトロエンはクルマが重装備になっていくのを嫌って,あえて軽装にこだわっているかのように思えます.独特のハイドロだってシトロエン流「軽やかさ」だといえるでしょう.

ドアが「薄い」のか車外の音が響いてきます.カラカラ鳴るエンジン音は「薄っぺら」です.これは良い意味ではありませんが気にするほどのことはありません.ステアリングやブレーキのタッチは「薄い」グローブのようにダイレクトです.

Sクラスがシベリアでも越冬できそうな革ジャンパーなら,BXは麻のジャケット.ヘビーデューティーには向かないかもしれないけれど肩の凝らないクルマです.クルマだけにとらわれないライフスタイルをもつ人に似合うクルマだと思います.

ただし麻はシワになりやすいのでご注意ください.

■ キャブ調査

キャブレターには型番が刻印されています.HAYNES WORKSHOP MANUAL "WEBER CURBURATORS" を調べても 34 DRTC というタイプは載っていませんでした.BXのキャブには「オートチョークが付いていたんだけど壊れたまま」だと聞いていたので,それがどこにあるのか知りたかったのです.

他のタイプのウェーバーの解説をみるとオートチョークの付いているモデルもあります.どうやらゼンマイのようなサーモスタットが冷えた状態では縮んでいて,温度上昇に伴いゼンマイが伸びることでアームを押していくような仕組みになっています.エンジンが暖まるとアームがチョークバルブを全開にするわけです.

実際にはもっと複雑なのですが,基本原理は熱膨張率の異なる2種類の金属を貼り合わせてゼンマイを作りサーモスタットにしているのです.そのケース外側に冷却水を通すタイプもあるようです.

スロットル部にはワイヤーが来ているのですぐにわかりました.このキャブレターは上部のエアクリーナーを介して空気を取り入れ,下部のインテークマニホールドに向けて混合気を送っています.

ということはスロットルバルブよりも上部(空気吸入側)にチョークバルブがあるはず.スロットルの上のほうになにやらアームが出ているのですが,そのアームのリンケージをたどっていってもオートチョークらしいものがありません.

試しにエンジンをかけた状態でそのアームを押さえるとアイドリングの回転が上がります.スロットルバルブとは別ですからこれがチョークのはず.でもサーモスタットが見当たらない.なぜ?

後日ルッソで聞いたら「整備中からオートチョークが壊れていたので外した状態で納車された」そうです.探しても見つからないはずです.(笑)

おおむね好調なBXですが,唯一コールドスタート時にエンジンが暖まるまでが難儀なのです.ATでストールと闘うのは疲れるのでできることならなんとかしたい.でもオートチョーク部品は高価らしいので,素人なりに工夫することはできないものでしょうか.