BX REPORT No.20
BXのどこがいいって気負いがなくていい.気取る必要もなければ,卑下する必要もない.ふだんの足として乗るにはちょうどいいあたりにいるのではないでしょうか.

え,そういうのをジツヨーシャっていうんですか?

■ BX処世術

低いんです.腰をかがめなくてはなりません.

ドアロックを開けようとすると鍵穴が低いのです.お尻が下がっているからなのですが,となりに停まっている軽自動車のそれよりも20センチは低い.この瞬間だけは「おまえはロータス・エリーゼか!?」.

だから着座位置も低い.ところがエンジンをかけるとモコモコっとお尻が上がる.「シトロエンは,ハイドロとはそういうものだ」と思い込んでいましたが,これは相当に変です.基本的に変なのは好きなのですが,この乗り心地はやや古典的です.

解説書を引っ張り出してハイドロの説明を読んでみました.ショック・アブソーバー,パワーステアリング,ブレーキをひとつのオイルポンプで動作させるシステムだから見方によればシンプルだそうです.また,どんなに人や荷物を積んでも車高が一定で操縦性への影響がないから安全だそうです.

そうじゃなくて,シトロエンはなぜハイドロを開発したのでしょうか.その理由が知りたかったのです.

とはいえ,普段はそんなこと気にしていません.BXのいいところ? 腰が低いところでしょうか.(笑)

■ 紙のクルマ

いえ,冗談ではありません.BXは腰が低いんです.

たとえばメルセデスが「鉄のクルマ」ならばBXは「紙のクルマ」.よくいえば軽快,悪くいえば薄っぺら.どっちみちBXで他車を煽ろうなどとは考えません.そんなの自殺行為です.

片側1車線の道路を流れに沿って走らせているつもりが前車との車間が開いてしまうことがあります.そういうときでもキックダウンしません.自然な加速に任せます.ほら,慌てたって赤信号だよ,クロカン四駆さん.SNOOPY で有名な Peanuts Comic に "Their rudeness matches their size." というセリフがありましたっけ.あら,わたしシニカルになってきました?

BXってリアタイヤが半分隠れているじゃないですか.これは着物姿の足元を連想します.ちょっと色っぽいでしょ? でっかい偏平タイヤをこれ見よがしに履くことを思えばなんて奥床しい.それじゃフロントはどうなんだって?

野暮は云いっこなしですぜ,旦那.