お察しのとおり「デイムラー」というのは「ダイムラー・ベンツ」に由来しているそうです.ドイツのダイムラーを英語読みしたのがDAIMLERだというので,このレポートでは「デイムラー」と表記しています.

実際にはジャガーで製造されているので,わたしはデイムラーも「ジャガー」のひとつのモデルだと考えています.

■ ドキドキした理由

キーは2枚あります.黒い樹脂がついているほうがエンジンキー,金属だけの鍵がドア,トランク,給油口のキーです.ドアは集中ドアロックがついていますが,トランクは毎回キーで開けるしかありません.運転席のドアをロックするとトランクもいっしょにロックされます.

ステアリングの右側にエンジンキーを差し込んで1段回すとアクセサリポジション.2段目が通常走行時のポジション,ここで「ABS FAILURE」という警告灯がつくのでびっくりしますが,エンジンをかけると消灯します.消えなければほんとうに故障です.もうひとひねりするとセルモーターが回ってV12がフォンっと目を覚まします.最初はいつエンジンがかかったのかわからなかったくらいエンジン音は静か.

ステアリングの左下にあるレバーがサイドブレーキ.斜めの取っ手を縦にして押し戻せば解除です.センターコンソールのシフトレバーは細くて上品.PレンジからDへレバーを引いても動きません.「MINIのリバースみたいに引くのかな?」と思ったら,なんのことはないレバーはすこし右に倒して引けばいいのです.トンっというシフトショックが来ます.

試しに,サイドブレーキを引いたままフットブレーキを離したらスーっと前進.サイドブレーキをつよく引き直してみたけれどだめです.クリーピングを止めることはできません.

走り出すとアクセルはどれくらい踏めば,どれくらい加速するのかわからないし,赤信号で停止するためにブレーキを踏んでも慣性の大きさに戸惑います.

止まっている車を動かすにも大きな力が要りますし,動いている車を止めるにもまたおおきな力が要るのです.この感覚は古いSクラスにはじめて乗ったときにも感じましたっけ.ある程度以上おおきなクルマになると仕方ないのでしょうか.

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DD6のキーを受け取ったときにドキドキした理由は2つ.

ひとつはボディサイズ.ALFA164と比べると,全長が+50cm,ホイールベースが+20cm,馬力が+40ps,重量が+400kgです.車幅は大差ないのに,長く,重くなります.とくにリアのオーバーハングが大きいので駐車場の輪止めまで下げるとバンパーが壁にぶつかるので要注意.またバックミラーは電動ですが,格納は手動です.狭い道でのすれ違いは気をつけないといけません.

もうひとつは価格.新車時は1200万円以上したそうです.それがいまでは半値以下とはいえ,わたしにとっては高価なクルマです.そういうクルマを1ヶ月預かるわけですからすこしは緊張します.

LUSSOを出るまえに運転席に座って取り扱い説明書に目を通しました.メーター周り,ダッシュボードのスイッチ類.ガソリンタンクが左右に2つあって,その切替スイッチがあるのです.燃料残量計は各タンクの残量を示しているとか.なんか変なの.

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運転席から見える景色はちょっとクラシックな雰囲気が漂っていて好きです.革と木とメッキ.窓ガラスは色がついていなくて室内は明るい.いまが冬でよかった.(笑)

やっぱりMINIを思い出します.

どこかしら似てるんです.街を走っていてMINIに出会うと仲間のような気がします.逆にドイツ車からは離れました.「他人に勝つとか負けるとか,そんなことよりも楽しもうよ」というところがイギリス車にはあって,だからマイペースで乗れそうな気がするのです.

MINIは軽自動車並みの取りまわしができますが,DD6は狭い場所では神経をつかいます.この大きさに馴れるしかないでしょうね.とくにリアは後端がすぼまっているので(運転席からは)どこまであるのかさっぱりわかりません.ホテルの地下駐車場でも一旦クルマから下りてうしろを確かめたのですが,ドアを開けて下りると床からもわっと熱気が上がってきました.どうやらエンジンルームから来ているようです.やっぱり熱はすごいみたい.

フロントの丸目4灯も好きだけど,リアビューのほうがいいかな.うしろに向かって低くなっているじゃないですか.だからジャガーは押しつけがましくなく,控え目な印象を受けます.アルファロメオもそうですが,ベンツのように前後が切り立った壁のようになっていると威圧感があります.

それでもDD6は存在感があります.高級車らしい威厳がある.メッキでピカピカしているけれど軽薄じゃない.わざとらしさがない.シブいクルマです.