電気モーターじゃなくてガソリンエンジンで動いているわけでしょ?
どうしても納得できない.あの空白は何なんだ? 右足が疲れてきたぞ.(ぶつぶつ)

■ 空白の3,000回転

富士川SAで休憩して,底をついてきた右ガソリンタンクを左に切り替えました.ボタンを押して切り替えると燃料計の針がすうっと上がっていくのがおもしろい.さて,あとは東京までひと息に走ります.

御殿場からは3車線になるから今日はいちばん左の車線をゆっくり走ろうかな.負け惜しみではなく,のんびり走るのも悪くはないのです.時間さえ気にしなければ.

シートの位置合わせが悪いのかもしれませんが,座面の前端が盛り上がっていて,右足のふとももに当たるので痛くなってきます.以前にもお話したようにアクセルペダルは重いのでしっかり踏んでやる必要があります.左足はどうせフットレストがないので手前に引いて,膝をセンターコンソールに当てて身体を支えられるようにします.

東名の御殿場を過ぎて3車線になったところでいちばん左車線に入りました.ここでオートクルーズ機能を試してみましょう.左腕を置いているコンソールボックスのすぐ前にあるオートクルーズのスイッチをON.アクセルで好みの速度にしたところでウインカーレバー先端の設定スイッチを押します.

そして右足の力を抜くと「わ!」.いま勝手にアクセルペダルが沈みました.なんだか気味が悪い.でも次の瞬間,感激.上り坂だからスロットルを開けたのですね.なんて利口なクルマなんでしょう.

オートクルーズは珍しい機能ではないのでしょうが,実際に体験したのは初めてだったのです.

よしよし,これで右足がペダルから解放されました.しばらく足を休ませることができます.ステアリングだけで運転しているのって妙な感じ.オートクルーズはブレーキを踏むか,40km/h以下になると解除されるそうです.道路が空いているからいいけれど,クルマが増えてくると危なくてだめですね.

それにブレーキは踏んでいないのに,何かの拍子にオートクルーズがキャンセルされるみたいで勝手に速度が落ちていきます.おいおい,80km/h切ってるぞ.もうオートクルーズはおしまいにしよう.

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と,アクセルを踏み込んだら「あれ,いまキックダウンしたぞ」.

もう一度スピードを落としてから踏んでみると,ちゃんと3速から2速にキックダウンされます.やはりスピードを落とせばキックダウンするんだ.ということはそのまま踏めば回転も上がっていくはず.光明が見えました.

わくわくしながら前が空くのを待ちます.一団のクルマが右側を追い越していきます.「まだまだ,あわてないで」.間合いを取るためにじっと我慢.

「よし,行こう」.アクセルペダルを踏みつけて中央車線に出ていきます.2速に落ちて回転が上がっていきます.ペダルを踏み続けると4,000rpmを超えてもシフトアップしません.うれしいような怖いような...どんどんスピードが増していって思わず息が止まります.5,000に達したところで前のクルマに近づいたので右足を緩めました.

「おまえ,速いじゃないか!」

5,000rpmは最大出力が出る回転数です.鳥がロケットになりました.

やはり加速感はないのですが,これなら十分速い.ドキドキしました.それに4,000rpm回すとV12の唸りも響いてきます.これが聴きたかったのです.

ほんの一瞬でしたが,ダブルシックスの本性を垣間見たような気がします.これは推測ですが,DD6の通常走行では3,000rpmまでで事足りるので,そこから上の回転は「ゆとり」という言葉で黙殺されているのではないでしょうか.あるいはそんなに回すのはジャガーらしくないとか.それはもったいないと思うのですが,実際にはそういう走り方をする場所が日本にはないので仕方ありません.

空白の3,000回転のうち1,500回転分は埋まりました.それ以上は埋めないほうがいいと思います.