都内では時々DD6を見かけます.日本には意外に多くのDD6が入ってきているのではないでしょうか.
- ■ 人をもてなす心
- 今日はいつもALFA164で使っていた裏道を通ってみることにしました.代々木まで片道10km弱の通勤路.世田谷といっても広いのですが,このあたりはタクシーでさえ嫌がるという複雑な地域.知らずに脇道に逸れたらひどい目に遭います.
何パターンかあるうちの通りやすい道を選びます.切り返さないと曲がれないようなところは避けたいですから.一方通行になっている道はよいのです.困るのは狭いのに対向車のある道.前からトラックでも来るとミラーを畳まなければならなくなります.踏み切りも狭いので要注意.下手すると対向車とすれ違いができなくて踏み切り内で立ち往生します.また「悪い冗談はやめてくれ」というような路上駐車もあって,ほとんど障害物競走です.
そんな土地ですが,自家用車は多いです.Sクラスやセルシオやランクルが走っています.みなさん,強気なのはハンドルがちゃんと切れるからなのでしょう.ALFA164は切れないので,一瞬タイミングが遅れただけで曲がりきれずに切り返す羽目になります.
DD6も切れないだろうと覚悟しておなじ道を通ってみたら「あれ,切れるじゃないか」.
「164だとここでロックするんだよな」というところを通り過ぎてもうすこし切れます.これは意外でした.この「もうすこし」が有難い.ハンドルが切れるというのはこんなに運転しやすいものだったのですね.
ただしDD6のほうが胴長なので「裏道適応度」は164と同程度でしょうか.無理して狭い道に入らなければいいだけです.慌てず騒がず「着くときには着く」と,泰然自若と乗るのがジャガーの粋.というか「でかいクルマ」はみんな同じでしょう.
今日も移動中にベンツに囲まれることが多かったのですが,ジャガーから見るとベンツってせわしない動きをします.そんな無理して前に出ようとしなくてもいいだろうに...道路も川のようなもの.流れの速いところがあれば,遅いところもある.それでも,いずれすべての水は海に流れ出るのです.
どちらかというとアルファロメオも強引な運転になりがちなのですが,ジャガーは(というかDD6は重いこともあって)一歩引いた謙虚な運転ができます.これもクルマの影響でしょうか.不思議ですね.
★ ★ ★ 帰路は音楽をかけずに走らせてみました.すると風の音が聞こえるのです.
軽くアクセルを踏むとフーっと風が吹いてきます.そういう音がするのです.なんだか本当に空を飛んでいるような気分になります.
室内の居住性という点ではSクラスやセルシオのほうが合理的で広いでしょうし,それなりに豪華でもあります.理詰めで考えれば積極的にDD6を選ぶ理由は希薄です.ただ,ダブルシックスには人をもてなす心があります.
コスト計算された,行儀のいい華やかさと,手作りの味が残るアンティーク家具のような渋い華やかさ.いえ,ベンツやトヨタがいけないと言うのではありません.いずれもすばらしいクルマだと思います.ただ,クルマにプラスαを求めたときの「志向の違い」を感じるのです.
「信頼性が低いだろう」と言われると(まだわかっていないので)返答に窮しますが,ALFA164と同様に,そのモデル,年式の弱点を知ったうえで整備され,やさしく扱ってやればそれほど恐れることはないのではないでしょうか.油断していると立ち往生するのはドイツ車でもおなじことです.
上手に付き合うことができれば他では得られない満足を提供してくれるクルマがここにあります.
ダブルシックスにひとりで乗っているのはもったいなくて,誰かを乗せたくなります.できればリアシートではなく助手席に乗ってほしいですけどね.(笑)