乗る度に発見があるというよりも,乗る度に感じ方が変わるのです.機械としての優劣よりも,そのクルマに接したわたしがどう感じるか,楽しめるかどうかに重点を置いています.読者のみなさんが混乱しないようにしたいのですが,その時々の本音を書くとある程度矛盾も生じます.一字一句を追うのではなく,全体のイメージを捉えていただければ幸いです.

■ デイムラー・マジック

突然ですが,デイムラー・マジックが切れました.

夢から覚めたらDD6もふつうのクルマになっちゃいました.

高級車を足に使ってる人の気持ちがわかってしまって気が抜けました.

DD6はべつに特別なクルマじゃありません.特別(スペシャル)というのはもっと尖ったクルマ,たとえばELISE 340Rのようなクルマを指します.魔法は2週間もちませんでした.

最初は緊張感もあるし,12気筒という無言のプレッシャーもありますから,街中でもゆっくり走っていました.でも馴れてくるとさほど神経をつかわなくなります.気づくと「いつもの走り方」になっていました.極論すればMINIでもDD6でもおなじです.

それはある意味,非常に寂しいことなのですが,早晩馴れてしまうのです.いつまでも馴れないと「疲れるから」と手放してしまうでしょう.馴れたあとも楽しめるクルマであるかどうかが運命の分かれ目.

一瞬全身の力が抜けて「これでレポートもおしまいか」と思いましたが,しばらくすると「それでもDD6は魅力がある」と思えるのでもうすこし続けようと思います.

今回,わたしにとって「クルマの魅力」とは車両価格とか高級車らしさだとか乗り心地ではないことが明らかになりました.見た目や雰囲気も付加価値として大事だけど,自分で操る乗り物である以上ドライブフィールが大切です.もちろん「踏めば応えてくれる」のが基本です.(笑)

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DD6のドライブフィールが悪いというのではありません.

わたしの言うドライブフィール=運転感覚とは,操作感,応答性,適度な音や振動などのインフォメーションを指します.操作感はステアリングやアクセル,ブレーキなどを操作するときの手ごたえなど,応答性はそれらを操作したときに遅れずに反応してくれること,適度な音や振動もないと運転しにくいし寂しい.最近は足回りのいい車に興味があります.

ドライブフィールといってもいろんなシチュエーションがあります.市街地,郊外,高速道路,峠道,サーキットなど,クルマによって得手不得手があります.DD6は郊外や高速道路がいいでしょうね.

ところが市街地でも(狭い裏道でなければ)意外に楽しめます.図体が大きくて重いわりにはハンドリングが軽快なのです.ステアリングが軽いのと,ちょっと切れば反応するから軽快に感じます.バランスを崩さないように優雅に街中を抜けていくのが気持ちいい.

最初は怖かった狭い曲がり角も,長いフロントノーズを横に振る感覚がおもしろい.当初はハンドルが切れないだろうと思っていましたが,それは心配ありません.これだけ切れれば問題ないでしょう.

つまりDD6は都内でもふつうに足として使えるということです.

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たとえばROLEXを定番の時計にしてしまえば迷いも消えるように,デイムラーを定番のクルマにすることもできるでしょう.DD6は定番になりうる資質を持っています.

ほんとうはデイムラーの魔法から一生覚めないでいたほうが幸せなのかもしれません.