DD6に乗っていると時々「傍目にどんなふうに見えるのかな」と気になります.きっとわたしはまだ若造に見えるのでしょうけれど,自分では違和感はありません.

■ トランクを開けば

1994年冬,MINIの次にどんなクルマにしようかとディーラー巡りをしていたとき,隣に展示してあったXJ6のトランクを恐る恐る開けてみたことがあります.

ジャガーってトランク部分が長いじゃないですか.トランクを開けると奥行があって子供が寝転がることができそうなくらい広いのです.当時MINIに乗っていたのでその広大さに驚きました.いま冷静にみると,幅と奥行はあっても浅いのでかさばる物は積めません.

当時わたしが見たのがどのモデルなのかわかりませんがCDチェンジャーがついていて「こんな高級車とは縁がないな」.あれから6年経って,中古車とはいえラインアップの頂点に立つクルマに自分が乗っているのは不思議な気がします.

所有するに越したことはないけれど,クルマは必ずしも所有しなくても楽しむことができる.それを教えてくれたのはEワヤマさんでした.以前は「こうでなくちゃイヤだ」というわがままがひどかったのですが,いろんなクルマに乗ってみるうちに自分の中の垣根がすこしずつ取り払われていきます.食べ物もクルマも「キライ」より「スキ」が多いほうが幸せです.

一度DD6に家族を乗せて出かけたことがあるのです.

しかし息子たちはクルマが変わろうがお構いなし.今年になって一段と騒々しさに磨きがかかったために「ジャガーだからゆったり運転できる」なんて優雅さは吹き飛んでしまいました.デイムラーの魔法も子供たちには通じません.一方,妻は昔からジャガーが好きなので,夫婦でのんびりドライブがしたい.

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スポーツカーは楽しいけれど疲れる,乗用車は楽だけどつまらない.

たとえばフェラーリの運転が楽しいのはそれだけ刺激が強いのです.以前,名古屋から神戸まで爆音Mondialで日帰り往復したことがありますが,それはもうクタクタになりました.一方,ジャガーのようなサルーンは刺激を与えないように角を丸めてあるのでしょう.近所迷惑になるような爆音もしないし,目立たないし,じつに平和なクルマです.

だからDD6も雰囲気は楽しめても運転はつまらないだろうと思っていました.ボディが大きいのも気が重かった.ところが刺激を完全に取り除いてはいませんでした.非常に行儀がいいけれど,ヤンチャな運転にも応えてくれる茶目っ気がありました.BMW 750iのV12はどんなふうなのでしょうか.ちょっと興味があります.

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もしも機会があればあなたもジャガーのトランクを開けてみてください.縁ができるかもしれません.