駐車場の脇に桜の木が一本ありまして,雨上がりの朝,リトモは一面「さくら模様」になっていました.遠目には愉快なのですが,近くでみるとやっぱりうっとおしい.(笑)リトモに乗りはじめて2ヶ月が経ちました.毎日の足として使い,サーキットや峠も走ってみました.そろそろレポートのまとめに入りましょう.
- ■ リトモの魅力
- このレポートをはじめて「当時新車でリトモを買って乗っていた」「当時欲しかったけれど手が出なかった」「欲しかったけれど程度のいい個体が見つからなかった」等々メールをいただいて,リトモに興味を持っている方が意外に多いことに驚きました.
当時のオーナーさんは「あの車は気合いの入っているときはいいのですが、あの馬車のような乗りごごちにはまいったものでした。エンジンはそれなりに気持ちよく、なぜか雨の日にエンジン音が妙によかった事を思い出しました。エンジンはキャブなので155の様にがばっと踏むとぐずり、車速にあわせてじわっと踏むのがコツだったと思います。一度エアクリーナーをはずして乗ってみたかった」とのこと.
「馬車のような乗り心地」はまさに同感ですし「キャブのほうがレスポンスがいい」と聞いたことがありますが現実はちがうようです.わたしにとってキャブレター車の魅力とは吸気音の魅力ですね.インジェクションとちがって調整できるのも一長一短.キャブ調整にこだわりすぎると泥沼化します.
hisata にとって130TCの魅力とは?
- リトモの最強バージョンであること
- 気合を入れると最高にFUN
- コンパクトボディに広い室内
- ウェーバーの吸気音
- 手頃な値段
リトモの最強バージョンに「50万円+整備費用」で乗れるなら乗ってみたい.それが今回の出発点でした.自分の価値観に見合う価格帯に下りてきたクルマを選ぶ.それが中古車の楽しみ方です.Eワヤマさんの場合,それに加えてボディ色や内装にこだわる.「ほんとうに乗りたいクルマに乗る.それが中古車の選び方」と言います.
整備費用を含めて全部で100万円でリトモに2年間乗れるとしたらどうでしょうか.家族のためのクルマが別にあれば,それはあなたの趣味のクルマです.悪くはないのではないでしょうか.
いまのところ当初心配していたトラブルも起きず,経済的な気軽さに加えてコンパクトで気負いもありません.ステアリングの重さと乗り心地の固さは健康と体力を要求しますが,扱いにくさも慣れてしまえば「無いと寂しい」.気合を入れてワインディングを走らせると最高に楽しいクルマです.音楽でいえばリトモのリズムは8ビートかな.
クルマは乗りやすいに越したことはありませんが,乗りにくさや扱いにくさもリトモの特徴だと思えばそれでいい.車庫入れするときにステアリングを握る腕に力を込めるのも無意識なら,1速に入れるときに2速をなめるのも無意識.リトモは「クルマに合わせる」ことを教えてくれました.道具には使い方があり,クルマには乗り方があるのです.
クルマに「乗せてもらう」のでもなければ「乗ってやる」のでもない.「ちょっと昔のクルマ入門」にはちょうどいいのではないでしょうか.
- ■ リトモ交際術
- 下り坂の下に信号があって,その手前が洗濯板状態.リトモが跳ねてしまってブレーキが効かないのです.タイヤが路面から浮いていたのではブレーキが効くはずがありません.内装がきしむなどという可愛いものではありません.ガガガガガっという音と強烈な振動に驚きます.コーナーリング中に跳ねたら冷や汗ものです.でも個人的にはふわふわするよりは固いほうが好きです.リトモなら車酔いすることがありません.(笑)
リトモって「やんちゃ坊主」です.いっしょになって汗を流すつもりなら絶好の遊び相手なのですが,安心感とかやすらぎといった言葉とは縁遠いのです.おもしろい反面くたびれる.アルファロメオにも似たようなところがありますが,なにかに突き動かされるような感覚というのはイタリア車の特徴なのでしょうか.
そのやんちゃ坊主を手なずけるところに醍醐味があります.
冬の朝のエンジン始動にはじまり,スムーズなシフト操作,タイヤにパワーを伝えるアクセルワーク,高速コーナーではアンダーが出ても慌てないこと.特別速いクルマではないけれど,シンプルなFF車の運転を覚える教材としてはおもしろい.チューニングして楽しむよりは現状を維持しながら楽しむのがお薦め.
現行チンクチェントやブラーボにもアバルト仕様があるそうですが基本的にドレスアップであって,エンジンや排気系までチューンしたのはリトモが最後だと聞きます.そういう意味で130TCに思い入れをもって乗るのもいいですが,わたしはもっと気軽に考えたほうがいいと思います.こっちが構えるとクルマも緊張して粗相をします.(笑)
ボンネットを開けてごそごそ触っていると燃料やオイルの匂いが手に染みついて取れなくなります.だからといって業務用洗剤を買ってくるようになったら末期症状.でも機械いじりっておもしろい.キャブレターだってそれほどむずかしく考えなくてもいいと思います.組み合わせが複雑なだけであって,基本的に機械は正直です.
走らせて楽しむのもいい.いじって楽しむのもいい.1年か2年の期間限定でいいじゃないですか.枝葉末節にこだわらず,おいしいところを食べればいい.
わたしもリトモのおかげで,かならずしもお金をかけなくてもクルマは楽しめることがわかりました.個人的にはそれがいちばんの収穫かもしれません.