1993 LANCIA DELTA INTEGRALE EVO.1

ガレージレポート」でエンジンをオーバーホールしたエボ1です。慣らしが750kmまで進んだ時点でわたしが試乗することになりました。最終的に1,000kmで納車される予定です。

実は今回のWEEKEND試乗に先立って、先週、蒲郡まで乗っていきました。東名高速の名古屋ICから音羽蒲郡ICまで往復すると約90km。あいにく慣らし序盤だったので「3,500rpm以下」という縛りがありました。

第一印象は「思ったより乗りやすい」。

ターボも3,000rpm手前から効いてくるので、3,500rpmリミットだと、うしろから大きなウチワで煽がれているようなふわーっとした加速を感じる程度。それでも高速道路での追い越しもむずかしくはありません。「デルタ=どっかんターボ」というイメージがあるけれど「もうすこし上まで回すとどうなんだろう?」というのが興味のあるところでした。

LUSSOでエボ1の扱いに関するレクチャーを受けます。

  1. 朝、出るときの暖気
    水温計、油温計の針がちょっとでも動いてから発進
    すぐに発進するときは2,000-2,500rpm(3速以下)で暖機運転

  2. 停止前1kmはブーストをかけずにクールダウン
    停車してからのアイドリングよりも走行しながらのほうが効果的

  3. 回転数の上限は5,000rpm
    軽く吹けるのでこれ以上回すとエンジンを壊す恐れあり

エンジン音も排気音も静かです。一度はマフラーを換えたのですが、やかましいのと低回転域がスカスカなのでノーマルに戻したそうです。アイドリングが多少ラフなのはフライホイールを30%軽量化したため。ラフな振動がステアリングから伝わってくるほうが「ちょっとワルそう」で魅力的。発進時にクラッチをつなぐ際、やや神経をつかうものの、慣れればノープロブレム。このエボ1はバルブタイミングをちょっと変えてあったり、鍛造ピストンが入っていたりと、ノーマルとはすこしちがうので以下、割り引いてお読みください。

ガソリンの残量が3分の2を切っていたのでスタンドへ。タンクのキャップはキーをつかって開けます。「ハイオク満タン」で45リットル入りました。タンク容量は57リットルのはずだから残量計はあくまで目安。

土曜の昼に足助に向かいます。道路は当然混んでいます。3,000rpm以下のエボ1はふつうのクルマです。走りたいのに走れない。ストレスが溜まります。

ようやく猿投グリーンロードにたどりつき、料金所を抜けて「それ行けー」。2速から3速へシフトして軽く踏むとあっという間に3桁km/h。ブーストをかけてからアクセルを緩めたとき、プシューっと(圧が抜ける)音がするのがターボ車らしいところ。用心しないと免許がアブナイ。

ほぼ全線、流れに合わせて走るしかなかったのですが、最後から2番目の出口で前車が下りたのでチャンス到来。右足に力を入れると「うわぁ、速〜い!」。風にのって滑空する鳥ってこんな感じなのではないでしょうか。ドキドキしましたが、運転していて不安はありません。

10年前のクルマとしては立派なものです。「デルタ=壊れる」という図式もオーナーの心がけ次第。LUSSOのメカニックさんいわく「ターボ車の扱い方を心得て(オイル交換、タイミングベルト交換などの)メンテナンスを怠らなければ長く楽しめるはず」。


(左端が速度計、中央上段がブースト計、下段左から電圧計、燃料計、水温計、右端が回転計)

ブースト計は最高1.2 bar。中央の0.6 barまで針が振れれば結構な加速を見せてくれます。グリーンロードを抜けて国道153号線で足助へ向かう途中、県道に逸れました。しばらくアップダウンのあるワインディングが続きます。ずっとブースト計とタコメーターを気にしていましたが、このペースなら5,000rpmを超えることはないとわかって計器を気にせず、ブレーキとタイヤに合わせて走らせることができました。

このコースをいろんなクルマで走りましたが、その中では明らかに最速です。上り坂でもぐんぐん加速していくのはターボならでは。コーナーで多少タイヤが鳴いても、なぜか怖いとは感じません。遮二無二踏むのではなく、必要に応じてじわーっとブーストをかけてやるのがコツ。本気で走るならシートをバケットタイプに換えたほうがいい。他のターボ車をあまり知りませんが、このエボ1のターボはスムーズで扱いやすいほうだと思います。試しに、一旦速度を落としてからフルブーストをかけてみましたが低速からでは驚くほどではありません。ターボはエンジンのパワーを補完するものだということを実感しました。

すぐに前車に追いついてしまうので「後続車がないことを確かめてスローダウンしてから再加速」を何度か繰り返して峠ドライブを楽しみました。マイペースでワインディングを抜けていくうちに、まるで(デルタではなく)自分の右足にターボが内蔵されているような錯覚に陥りました。気が合ってしまったのか、操りやすいサイズだからか、妙に一体感のあるクルマです。

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5ドアハッチバックだからというわけではありませんが、家族を乗せて買い物に出かけました。事前に息子たちにはWRCを走ったLANCIA DELTAのビデオを見せて洗脳してあります。小6の長男はマルティニカラーのデルタが気に入ったようですが、小4の次男は「スピード出しすぎ。(お父さんは)安全運転してね」。実車を(リアから)見ると「なんだか平べったいねー」。

街中ではターボの出番はほとんどありません。「どんな感じかちょっと見せてやろうかな」とブーストをかけると、バタバタとせわしない運転になっていけません。ファミリーカーとしてのデルタでターボを使うのは、高速での追い越しくらいに留めたほうがいいみたい。ともすると柄の悪いクルマに見られるので、街中ではスムーズに、スマートに走らせたいところ。

基本的にスピードと加速を楽しむクルマです。ストレートのハイウェイもよし、ワインディングもまたよし。どこかでデルタに出会ったときに「なんだ、古いクルマだな」と油断していたら、あっさり置いていかれるかもしれません。