1990年式で走行距離25,000kmという程度のよい8.32がLUSSOに入ったというので試乗させてもらいました.じつは現在の愛車であるALFA164から乗り換えてもいいかなと思ったのです.ですからhisataは常に164と比較してしまいます.あらかじめご了承ください.
ぱっと見た第一印象は(程度がいいのはわかるけれど)「10年経つとこうなるのかぁ」.赤といってもシックな色合いですし,内装は全部革張り,その豪華な感じは嫌いではありません.でも15インチのタイヤが小さく見えるし,なんとなくタクシーみたいで「164のほうがかっこいいな」(ごめんなさい.オーナーの欲目です).
8.32に興味があるのはそのエンジンフィールです.フェラーリ308 QVのV8エンジンをデチューンしたというのがどんなものなのかが知りたい.以前乗っていた155TS 8Vがそうであったように「クルマをエンジンで選ぶ」こともあります.
夜になって涼しくなりました.Eワヤマさんと同乗してLUSSOをあとにして例によって足助方面へ向かいます.途中レストランで食事をしてからわたしに運転を代わってくれました.
キーを渡されドアロックを「あれ?」.右に回すとアンロックなのね.本革シートに座ってキーを差し込んで,ブレーキとクラッチを踏んでイグニッションを回します.排気音は思ったより静かです.水温計や油温計などの補助メーターはセンターコンソールのほうへ出されています.ちなみに油温計は動きません.ボディサイズは大差ないはずなのですが,運転席は164のほうが広いかな.
余談ですが,リアシートのヘッドレストが倒れているからどうなってるのかと思ったら,リアのドアを開けると自動的に起きてくるのです.そのまま隣の席に移動すると体重に反応して隣のヘッドレストが起きてきて,しばらくすると元のヘッドレストは倒れました.こういうギミックは大好きです.(笑)
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レストランの駐車場を出て東へ向かいます.久しぶりにMT車に乗ることもあってワクワクします.
クラッチもシフトもステアリングもすごく軽い.ステアリングなんか軽すぎて日本車を運転しているみたいな錯覚に陥ります.これはタイヤが細いこともあるのでしょう.エンジンは3リッターあるから3000rpmくらい回していればアクセルのツキもいい.ぐっと前に出てくれるから気持ちいい.
ためしに5000rpmちょっと回してみたのですが,思ったほどエンジン音も響いて来ないし,盛り上がる感じもない.フェラーリのV8だったらこれくらい回せば刺激的なのに「これはちょっとちがうぞ」.これがデチューンという意味でしょうか.これだったらALFA ROMEO 164QVのエンジンのほうが気持ちいい.エンジン音でドライバーの気持ちを盛り上げるのはアルファロメオは昔から上手です.
あとはグリーンロードでスピードを上げて走ると足回りが頼りないのです.サスペンションが経年変化でへたっているのでしょうか.あまり飛ばすと怖い目に遭いそう.前回おなじコースを走ったPORSCHE BOXTERは楽しかったことを思い出します.
それでも運転しやすいし,刺激は控えめだけどV8は軽やかに回るし,雰囲気は最高だし,いいクルマです.「フェラーリのエンジンを積んだ4ドアセダン」という看板がなかったとしても悪くはないと思います.
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夏の都内の渋滞でも実用になれば8.32は「最高のセダン」かもしれません.その点,Eワヤマさんは夏でもエアコンが使えるようにしようと考えてくれていたのですが,調べていくにつれて万全を期すのはむずかしそうだという話になってきました.
ラジエターのコア増しをしたり,電動ファンのフィンを増やしたりしても,風の通り道を作らないと熱を逃がしきれないみたい.それでもボンネットに穴を開けることだけはしたくないとか.
夏でもエアコンは効きます.問題は渋滞なんです.すこしでも流れていればオーバーヒートすることはなさそう.渋滞で動けなくなったときにエアコンを切って窓を開けることができるかどうか.
都内は排気ガスで煙たいから窓を開けて走りたくありません.渋滞だってその日によって状況が変わります.都心に向かうと30分かかって数百メートルしか進まないこともあります.だからわたしは8.32を持っても夏は乗れないでしょう.
わたしが名古屋に住んでいれば,渋滞も東京ほどではありませんし,万一のときにはLUSSOに助けを求めることができるから,素敵な候補車になっていたでしょう.残念ですが,セダンは実用性が命.楽しむのがむずかしいクルマを手に入れても仕方ないのであきらめます.
勝手なことを言っていますが,hisataは試乗中に何度も「いいクルマなのになぁ.夏に乗れないんじゃなぁ」と悔しそうに呟いていたことを書き添えておきます.
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