BX REPORT No.6
BXがあんまり平和なのでレポートも5回で行き詰まってきました.Eワヤマさんにそうメールしたら「BXレポートはリトモとは違う角度から進んでいるのが見えますがのんびりが基本でしょうね.実用車ですから」.

そう,長く付き合えばスルメみたいに味が出てくるような気がしています.ともかくいろんなシチュエーションで乗ってみることでしょう.

■ お散歩BX

そういうつもりじゃなかったんです.だけど目が覚めたら5時だったんです.なんて言い訳しながらリトモとおなじコースを走ってみることにしました.

いまにも雨が降り出しそうな曇り空.明け方の広小路通りを東へ飛ばしながらも,つい左車線を走ってしまいます.リトモではひたすら右側を突っ走ってたことを思うと遠慮がちです.

グリーンロードでは下りでス〜っとスピードが出るから怖い.「ホールドすればいいのか」と気づいたのは帰宅してから.一方,アクセル開度を一定のまま上りになると自動的にシフトダウンして加速しようとする感じは悪くない.ミッションはちゃんと働いてるな.

リトモでは嫌というほど感じた路面の凹凸をBXではほとんど気づかない.偶然とはいえ「10年物レポート」の1号車と2号車は両極端です.乗り心地も,楽しみ方も対照的.だけどあえておなじステージに連れ出してみたのです.

グリーンロードを抜けて足助方面へ.リトモのときと時間帯はおなじなのに他車が多い.ツーリング風のバイクも追い越していきます.でもじきにわたしは国道153号線をそれて県道に入ります.ここはさすがに他車がいないのですが,時折軽トラックが飛んでくるから要注意です.

このお散歩コースは行きが上り,帰りが下り.裏道のタイトなワインディングをそれなりに走るにはDレンジでは直線が続くと3速にシフトアップされてスピードが出過ぎてしまいます.4速ATなので2速にホールドします.これで 3,000 - 4,000rpm で走ることになります.たまにはこれくらい回してもいいでしょう.

コーナー手前で軽くブレーキングしながら回る感じで無理せず上っていきます.ATっていいですね.ブレーキのタイミングとハンドルを切り方に注意していればいい.シフト操作が不要だからスムーズに抜けていくことに集中することができます.逆にいうと普段はシフトに気を取られてしまっている証拠ですね.ブレーキングしながら右足の踵をアクセルに置こうとして「あ,ちがった」と苦笑.

それにしてもシートのホールドが悪い.サイドサポートが弱いから膝で踏ん張るしかありません.そこまで横Gをかけてはいけないということでしょうか.

2速ホールドとはいえ,折り返し地点の「いこいの村愛知」手前のヘアピンはきびしい.上らないんです.かといって1速ホールドはギア比が低すぎて使えません.それでも上っていくとが出迎えてくれました.

片道1時間.リトモとおなじです.なにに乗っていてもわたしの走り方は大差ないようです.(笑)

■ 正調・BXのリズム

「いこいの村」で折り返して山を下っていきます.国道153号まではヘアピンの連続.ブレーキは効くけれどタイヤの限界がわからないから不安なんです.こんなふわふわした足が踏ん張ってくれるとは思えず「ここでアンダーが出たら」と思うと怖くてだめです.そろそろと下っていきます.

そりゃ実用車ですから少なくとも舗装路であればどこだって走ります.だけど「それが楽しいか」という話になったら,こんなタイトなワインディングは楽しくない.とくに急勾配の上りは苦手.ロータス・エリーゼが恋しい.

153号線に出たところのドライブインで「缶コーヒータイム」.グラブボックスに放り込んできたパンをかじって朝食かわり.なんだ,このパン暖かいぞ!? BXのグラブボックスにチョコレートを入れてはいけません.(笑)

「思ったとおりというか,思ったよりつまんなかったなぁ.走るのが好きな友だちを誘わなくてよかった.(気持ちのうえで)置いてけぼりを喰らうところだったな」

人はなぜ峠を走るのかわかったような気がします.

クルマを自分の思い通りに走らせたいんです.自分の思いについてきてくれるクルマが愛しいのです.逆にモタモタしたクルマじゃフラストレーションがたまるだけ.BXはそのパターンだったわけです.

がっかりしてBXで帰路につきました.県道に比べれば道幅もあってラクチン.「やっぱりBXは表の道を流しているのがいいんだな」とひとりごちながら下っていきます.リトモとおなじコースを走ると決めていたので,もうすぐ足助というところで右折して県道に入ります.路肩に桜が並んでいて平和なムード.「こういう世界もまた楽し,か」.

じきに回送の路線バスに追いつきました.「そうか,ここはバスが通る道なんだ」.ひらめいてしまいました.しばらくしてバスが左に寄ってくれたので「ありがとう」と軽くクラクションを鳴らして追い越します.

「カーブの奥で急にハンドルをこじったらどうなるだろう?」

見通しのよいカーブで試してみたらズズっとフロントが逃げようとします.何度かサーキットを走ってはいても,わたしはまだクルマの運転は苦手です.とくに足回りのことはよくわからない.それでも,いまのズズっできっかけを掴みました.

「このハンドルは反応が鈍いのかな?」と直線でハンドルを左右に振ってみます.ほんとうのセンター付近はダルだけど,切ったら切っただけ反応するじゃないか.すくなくとも曲がろうとはします.

そうしたら次はラインに沿ってやってみましょう.キュルキュルキュルと鳴きながらもフロントタイヤはラインをなぞっていきます.外側はぐっと沈み込んだまま路面の凹凸を吸収しています.BXに乗ってはじめてワクワクしました.

「これだ,これがBXの走り方,リズムなんだ!」

上りのタイトコーナーはだめ,下りの中速コーナーが勝負です.まえを行く四駆を直線では先に行かせてカーブの出口で追いつく.「直線が速いのは当たり前」と繰り返して楽しみました.

比較的ゆるやかなカーブの連続,しかも下り坂.交通量が少なくてマイペースで走ることができれば最高です.ふらつくことなくびしっと安定した姿勢で右に左にカーブを抜けていく.そういうカッコ良さもある.傍目には派手にロールしたBXが見えるでしょうし,ひとつまちがうとスキール音も伴いますが,それもいいかも.(笑)

「ここまでは大丈夫」という一面を見せてもらって「おまえはもっと軟弱者かと思ってたけど勘違いだったみたいだな.硬派とか軟派とかという問題じゃない.クルマは乗り手次第ということか」とBXを信頼しようという気になりました.

グリーンロードを抜けて名古屋市内まで戻ってきたとき,2時間前よりもBXと仲良くなったわたしがいました.