自分なりに考えて,無難なところで試してみて,その結果をもってメカニックさんに相談する.するとまた方針が見えてくる.それだけでもリトモは楽しめます.
- ■ 整備相談コーナー
- アイドルジェットを掃除しても息継ぎ現象は消えず,ジェットが古くなっているのと太さを変えてみたいのとで長屋さんに相談してみました.
エンジンルームを前にして前回の経緯を説明したところ「それだったら加速ジェットを見てみましょう」と脇のねじを外して引っ張り出してきたジェットは45番.これはキャブレター内部に飛び出して燃料を補う部分です.4本とも取り出して息を吹き込んでみたら詰まってはいませんでしたが,念のためにパーツクリーナーで掃除しておきました.
「このキャブも一度オーバーホールしたいんだよな」と長屋さん.内部でどこかが詰まっているかもしれないのでプロとしてはそれがいちばん早いでしょう.だけど,わたしは原因を手前から順番につぶしていきたいのです.息継ぎを直したいだけでなくキャブの仕組みを体感したいのです.
「ちょっと待ってください.最終的にはそうすべきだと思いますけど,いまここでオーバーホールしてもらうとわたしがわからなくなってしまいますから順番に行きましょう.これも楽しみのうちですから」.
息継ぎ現象の原因がどこにあったとしてもジェットを換えるとどう変わるのかを体験してみたい.わたしの気持ちを汲んでくれた長屋さんは「それじゃ加速ジェットをすこし太くして,アイドルジェットを細くしてみるとか試してみますか」ということで取り寄せてもらえることになりました.ついでにオーバーホールキットも取っておきましょうね.
「もうひとつ気になることがあるんだよな」と長屋さんはプラグレンチを持ち出しました.みると1番と4番の電極は一応白く焼けているのですが,2番と3番はすすけています.「ノーマルよりも冷え型の7番が入れてあるから低回転がぐずるのかなあ.いま在庫がないから6番も取り寄せておきますよ」.
余談として「昔の4気筒エンジンは2番,3番って熱くなる(冷えにくい)からバルブシールとか痛むのが早いんですよ」.なるほど,両端の1番と4番にくらべると冷えにくいわけですね.
ついでにオイルゲージを見ると減ってはいないのですがオイルが黒い.エアフィルターも付けてあるし,オイルフィルターも新品だったし,まだ 700km しか走っていないのに汚れるのが早いですね.「それまでの乗り方によってオイルの汚れ方はまったくちがうんですよ.サーキットを走るまえに換えましょう」.
状況報告しただけでなにも変わらないのもつまらないなあと思って(エキマニの上を指さして)「ここはダクトを差すところなんですよね」「ええ,いまは外してあるけどエアクリーナーのカバーがあって,そのダクトからホットエアーを吸わせるんです」「そのカバーを見せてください」.
赤い鉄のカバーに ABARTH と刻印されています.タイミングベルトカバーは黄色いし,にぎやかですね.「いまの時期はホットエアーを吸わせるといいかもしれないから付けてみますか」.カバーにはレバーが付いていて夏は(向かって)左側のダクトから冷気を,冬は正面のダクトから暖かい空気を吸うように切り替えるわけです.取扱説明書に「外気温13度以下のときはレバーをホット側に」と書いてあったのですが「レバーってどこ?」.やっと事情がわかりました.
試しにエンジンをかけたところ「すごく静かですね」.アクセルを煽ってもほとんど吸気音が聞こえません.長屋さんとふたりで「乗用車になりましたね」「これが本来の姿なんですね」.
長屋さんはリトモの納車整備をしてくれたのですが「あまり乗ったことがない」とのこと.今度タイヤ交換するついでに自宅に乗って帰ってもらいましょう.ついでに4点式ベルトのアンカーも付けてもらえるとうれしいな.
- ■ ジュリアのキャブ
- そこへ横山さんがいらして「どうしたんですか?」「壊れたわけじゃないよ(笑)」.
そういえば横山さんにリトモのジェットが何番か教えてほしいって言われてたので「リトモはアイドルが55番,メインが135番,加速が45番です.ジュリアは?」「え~っと,メインが125番で加速が35番だったかな」「リトモに比べると細いですね」「え,何番っていうのはそういう意味なんですか?」.長屋さんとふたりで絶句したのでありました.
「アイドルは?」「見てません」「それじゃ見てみましょうか」「どこにあるんですか?」.ふたたび絶句.(笑えません)
ジュリアのボンネットを開けるとリトモとおなじタイプのキャブが付いています.ただし,エンジンが縦置きなのでキャブは右側に付いていて4連ファンネルには金網がついているだけ.これはうるさいはずです.アイドルジェットをみると50番です.リトモとおなじですね.
横山さんのジュリアはUS仕様で本来インジェクションだったのをキャブに改造したもの.赤い表紙の ALFA ROMEO オーナーズマニュアルの相当キャブをみるとノーマルはメインジェットが130番,加速ジェットが30番,アイドルジェットが50番となっています.つまりアイドルは標準ですがメインが5番だけ細く,加速が太くなっています.加速重視タイプなのでしょうか.
ジュリアのキャブは一応オーバーホール(清掃)済みということなので,あとはエンジンのオーバーホールです.横山さん,がんばってね.
その夜,高原書店に HAYNES(ヘインズ)の WEBER carburettors を探しに行きました.解説図や分解図をみても「この部品は何ていうんだろう」というのが知りたくてたまらなくなってきたのです.浜田さんのところにあったのはソフトカバーだったのにこれはハードカバーで \4,950.ちょっと高いけどいいでしょう.ジュリアにも使えますから横山さんにも貸してあげましょう.(ぜんぶ英語だけどね)
ついでに店員さんに「ヘインズで FIAT RITMO は出ていませんか?」「あ,この FIAT STRADA というのがそうですね」.たしかに裏表紙に STRADA (RITMO) と書いてあるし「130TC の解説もふくむ」とあります.STRADA というのはアメリカ向けの名前なのでしょうか.中を見せてもらったら 130TC の独立ページはなく,各部の解説の一部に「130TC の場合はこうです」とあるだけなのですが他にこういう解説書が見あたらないので2冊とも買ってきました.Owners Workshop Manual ですから買わずばなりますまいということでしめて1万円也.
これがあればキャブのオーバーホールも自分でできないかなあ.長屋さんのあわてる顔が目に浮かびますし,すごく時間がかかるだろうから付き合わされる方はいい迷惑ですね.オーバーホールはまだ先のことだし,それまで解説書をじっくりと見ておきます.
高原書店からの帰り道,5,000rpm まで回してみました.ちゃんと吹けます.でも最近は息継ぎ現象のことばかり考えて乗っているものだから心から楽しむことができません.気がかりの種は取り除くべきですね.