Alfa Romeo 1300 GTA Jr. 納車整備
- 2016/12/22
- LUSSO JAM
- Posted by lusso_cars
- Leave your thoughts
このほど納車整備が完了して新しいオーナー様にお渡しした1300GTAジュニアです。
GTAの”A”はイタリア語で「軽量化」を意味する”alleggerita”の頭文字で、ボディやメカニカル
パーツをアルミやマグネシウムで作り替え、エンジンも専用のものが開発されたレースで
勝つことだけを目的に開発されたレーシングモデルです。多くはレースに投入されましたが
ストラダーレと呼ばれる公道仕様も売られ、これはそのうちの1台です。
1600と1300合わせてホモロゲーションが取得できる1,000台程が作られ、うち1300は計447台です。
ただレース向けの記録に残っていないような例外的な生産もあったため諸説あり、本当の台数は
はっきりしていません。
リフトに上げられたGTA。もともとコンディションの良い個体だったのでクラッチ、ディストリビューター、
ドライブシャフトカップリング、ベルト、ホース類、タイヤなどの交換でした。
フロントバンパーすぐ上の小さな楕円形のグリルがGTAの証です。アルミボディに金網がリベットで
留められています。
GTAのエンジンは1600ジュリア系のエンジンをベースに開発されました。ツインプラグのシリンダーヘッド、
鍛造コンロッド、深いオイルパンなどを採用してアウトデルタが1基づつ入念にバランス取りしながら
組んだレーシングエンジンです。1300GTAは1600GTAのエンジンをショートストローク化したものなので
ボア径は1600の78mmと同じで、ストロークが82mmから67.5mmとかなり縮められたオーバースクエアな
エンジンです。低回転域でのトルク特性は不利ですが、吹け上がりの良さでは有利になります。
取り外した8本のプラグとハイテンションコード、ディストリビューターキャップ。今回はこれらと
ディスリビューター本体も交換しました。
クラッチ、カップリングの交換のためにドライブシャフトを外しています。
リアサス、ディファレンシャルケースを後ろから見たところです。作業中ずっとリアアクスルを
吊っているはリバウンドストラップと呼ばれる布製のベルトです(矢印)。以前モントリオールの
ブログ記事でこの辺りのことを書きましたのでよろしければご覧ください。
下ろしたベルハウジングとギアボックス。GTAは中の歯車も軽量化されたものを使っています。
ヒストリックレースの盛んな海外では、なんとこのギアボックスケースにそのまま収まる
6速トランスミッションが開発されて売られています。ベルハウジングが黒いのはマグネシウム製
だからです。
ベルハウジングから後ろが外されたエンジンを後方から見たところです。まだフライホイールが
付いています。
内部を清掃する前のベルハウジングです。レリーズベアリングとレバーが見えます。通常、クラッチ交換の
際はこのレリーズベアリング(矢印)も一緒に替えます。
外した古いクラッチカバーで、3つ爪タイプが付いていました。この3本の爪がプレッシャープレートを
作動させてクラッチを切ったり繋いだりします。英語だとこの”三つ爪”がスリーフィンガーと呼ばれます。
用意した新品クラッチカバー、レリーズベアリングとクラッチディスク(下の画像)です。こちらのクラッチ
スプリングは一般的なダイヤフラム式です。
1300のGTAはドアからリアにかけてこの太いサイドストライプが入っています。ストラダーレに
用意されたボディカラーは赤と白の2色でした。
ボンネット、トランク、ルーフ、ドアはもちろん応力を受けないパネルはできるだけアルミに
置き換えられています。上の画像を拡大するとホイールアーチ内側にフェンダーパネルが
リベット留めされているのが分かります。
下の画像はサイドシル付近のフロントフェンダー下部のリベットです。車全体でどれだけ使われて
いるかはわかりませんが、職人が一つ一つ手作業で留めたのでしょう。
試運転から戻ってきたところで、本当にいい音をしていました。この音と共に車と対話しながらの
ドライブはオーナー様だけに与えられた愉しみです。長らくお待たせしてしまいすみません。
我々もこのような車を管理させていただくことを誇りに思っております!