- 2016/10/25
- LUSSO JAM
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弊社が昨年イタリアから輸入した車で、日本上陸後二人目のオーナーの許への納車に向けて現在整備中です。
もともと現地で愛好家が大切に保有してきた車なので、輸入後も特に大きな整備は必要ありませんでした。
今回、納車整備としてキャブレターのオーバーホールとバンパーのクロームメッキをし直すことになりました。
F2エンジンのレギュレーションを満たすために生まれたフィアット・ディノですが、この車は後期型の2400ccです。
1969年トリノショーでフェラーリ・ディノ246GTと共に発表され、生産も同じ時(同年12月)に同じ工場
(マラネロのフェラーリ工場)で仲良く始まりました。
燃料の配管やスロットル・リンケージを外し3基のキャブを下したところです。エンジン自体はけっこう
低い位置に搭載されているのがわかります。
ヴィットリオ・ヤーノが手掛け、エンツォの息子ディノも開発に係わったバンク角65度のV6レーシング
エンジンがベースです。これをアルフレッド・ランプレディが公道向けにデチューンしたもので、この数年後には
ランチア・ストラトスにも使われました。
キャブレターを分解、清掃して取り寄せたオーバーホールキットの部品で組みあげていきます。本体内部の
細い燃料経路を入念に確認しながらエンジンコンディショナーやキャブレタークリーナーで洗浄します。
これらのケミカルは強力なのでゴム手袋がしばらく使っているとブヨブヨに変質してきます。
その下の画像は洗浄の済んだジェット、スクリュー類です。
きれいになったオーバーホール後の状態です。ウェーバーのダウンドラフト40 DCNF型で、下段の写真は
キャブの底面から撮ったところです。蓋みたいに見える二つの色の濃い部分がアクセルに連動して開閉する
スロットルバルブで、型番の「40」はこの口径が40mmであることを表します。
キャブレーターの時代、ウェーバーは車好きの琴線にふれる憧れのブランドでした。嬉しいことに今でも
イタリアのマニエッティ・マレリ社の傘下でスペインにて製造を続けています。リンク→WEBER
元の位置に取り付けられてこれから調整に入ります。このキャブが並ぶ光景がたまりません!
インジェクションがすっかり当たり前になった今ではキャブ調整の経験のないメカニックも珍しく
ありませんが、当社のメカニックは自身でも長年にわたってキャブのチューニングカーを
保有して知り尽くしていますので心強いです。
上のキャブを外した写真と共にご覧いただきたいのがスーパーカーの流儀にのっとったエンジンルームです。
ボンネット裏とエンジンルーム内が黒く塗装されています。ここがボディと同色だとちょっと
普通の車っぽくなってしまいますが、こういう何気ないところにこの車の生まれが出ていますね!
旧い車が大好きなT様、もう少しでご納車できます。私共もお渡しする日が楽しみです。
- 2016/10/14
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納車に向けて整備を進めてきました1991年式964型カレラ2です。
真っ赤なポルシェ!オリジナル状態が良く保たれています。
撮影時はちょうどブレーキホースの交換中でした。重要保安部品であるこのホース、ゴムでできているので
時間と共に劣化するのは避けられません。経年変化だけでなく冬季、路面にまかれる凍結防止剤(塩化カルシウム)
なども劣化の原因になります。
地味だけれども命にかかわるパーツです。目視では判断が難しいので定期的な交換をお奨めします。
ブレーキオイルリザーバータンクはトランク内にあります。ブレーキオイルを抜いてホース交換、エア抜きと
いう手順で進めます。下段は右前輪サスで、矢印のホースを交換します。
ブレーキキャリパーはブレンボの4ピストンです。
そして左後輪です。リアはエンジン側のホース取付部付近の工具の入るスペースが狭くて
若干やり辛いです。下段は新品のホース。
こちらは同じく左後輪のブレーキローターを外した状態です。矢印のハブボルトの台座部分をご覧ください。
余分なところをぎりぎりまで少なくしてバネ下重量軽減に努めています。
こちらのホイールナット。持つとエッ?!と思うほど軽い軽合金製です。ポルシェは昔から
こういう細かなところにも惜しまずコストを掛けてます。彼らにとっては当たり前のことをやって
いるだけなのでしょう。カタログとかでもいちいち声高にアピールすることなく売っていました。
運転して楽しいだけではなく、こういう姿勢も人々の信頼を積み重ねて今日のブランドイメージを
築き上げた理由でしょうね。当社ではこのところ964型の入庫が続きましたが知れば知るほどいい車です!
これからも世代を越えて乗り継がれるのは間違いありません。
- 2016/10/7
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アイドリングが不安定になるなどエンジン不調のためお預りしたダイムラー・ダブルシックスです。
1968年登場のXJ6からほぼ変わらない風格あるボディにリージェンシーレッドと呼ばれる
ワインレッドが似合っています。ハンドメイドの内装に12気筒エンジンのジャガー最高級
サルーンでこの車は93年登録の最終型です。
原因はガソリンタンク内の腐食が進んで燃料系統が詰まり気味になり、燃料が十分に送られ
なかったことでした。タンクを新品に換えて解決いたしました。
これが取り寄せたガソリンタンクです。このXJ系はデビュー当時からタンクが左右に2つあって
給油口もそれぞれ別にあり、ダッシュボードにタンクの切替スイッチも付いています。
合計で91リッターも入ります。
給油口からみたところ。中がひどく錆びてしまっています。
タンクはこのトランクルームの側面、リアフェンダーの裏に立てて入っている感じです。
この後ろに向かってすぼんだリアスタイル、いいですね~。
この画像はリアバンパーを外した状態で、タンクはこの奥の空間にすっぽり収まります。
昔の名残で配管には英国規格のウィットネジが使われています。
タンク交換とは関係ありませんが4輪独立懸架の左側リアサスです。スプリングとアブソーバーが
片側2本ずつサブフレームに取り付けられています。見えにくいですがその奥にはインボード
ブレーキが見えます。ブレーキは前後ともガーリング製ベンチレーテッドディスク。
この構造といいコストが掛かっています!
この給油口がトランクの左右にあります。全てが金属で作られていてクロームメッキされた蓋の
部分だけでも肉厚でけっこうな重さがあります。現代の車ではありえませんね。
グリルはもちろんすべて金属製。最近の車のクロームと比べるとなんとなく光沢が“深い“感じがします。
エンジンルームにぎっしり詰まった感じの5.3リッターV12エンジンです。72年に登場した当時は
世界で唯一の12気筒4ドアサルーンで、性能的にも最高速度230km/h、0-100km/h加速が7秒前後と
ベンツの300SEL6.3などと共にトップクラスでした。
現代の車のようにテスターをつないで診断・・・というわけにはいきませんが、この車にとって
最も適した整備を常に心掛けています。これからもオーナー様にはこの乗り味をずっと永く
味わっていただけるようご一緒させていただきます!
- 2016/9/30
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弊社がイタリアから輸入したモントリオールです。
今までに全塗装以外には大きなレストアを受けることなくほぼオリジナルを保っていて、
コンディションもかなり良かったことが決め手となりました。
当時のワークスチーム、アウトデルタが開発したTipo33系レーシングエンジンを公道用に
仕立てたV8エンジンを搭載! 当時まだ特別だった燃料噴射やCDIイグニッションに
4カム、ドライサンプ、タングステンコンロッドなど多くがそのまま受け継がれています。
18台だけ作られた33ストラダーレを除くとアルファ唯一の自社製V8の市販ロードカーなのです。
日本到着後チェックを幾度か行い基本的な整備は済ませてありましたので、いよいよ最終段階に
入りました。 その内容は足回りのリフレッシュで、以下の内容で作業を進めております。
フロント&リア・ショックアブソーバー交換、 フロントアッパーアーム交換、
トラニオンアーム・ブッシュ交換、 リアトレーリングアーム・ブッシュ交換、
リアハブベアリング交換、 タイヤ交換
上の画像はフロントに装着されたビルシュタインのショックアブソーバーとアッパーアームです。
手前のブレーキローターの奥に見える黒い新しい部品がアームです。
その下の画像は外した古いパーツで各ブッシュにひびが入ってしまっています。これまでも
ビルシュタインが入っていました。
トラニオンアームという聞きなれない名前のアームの全体像が上3枚のトップ画像です。
役割はシャシとデフをつなぐアームで、接合部のブッシュにガタが出てくると後輪がビシッと
定まらず、シフトアップ直後などパワーが掛かるとリアがヨロッとふらつきます。
この画像とその下の画像の矢印部分で繋がっています。
デフはZF製リミテッドスリップデフで、下面に放熱用のフィンが付いています。 車軸の両端を
ぶら下げているようなものはリバウンドストラップと呼ばれる、今回のような作業時に安全のため
これ以上落ちないようにするための布製の物で最初から付いています。
その下の画像は交換するブッシュ達です。左から3番目の黒い円盤状のブッシュは本来矢印の
ところにあるはずなのですが、割れてしまったのか左右とも何も残っていません。
これではボディが振れてしまいます・・・・。
シャシをフロント側から見たところです。新品のアブソーバーがちらっと見えます。オイルバンと
シリンダーヘッドカバーはマグネシウム製!めちゃめちゃ軽いです。
ギアボックスはZF製5速で、同じものがこの後に登場したアルファ6(セイ)やマセラティビトゥルボにも
使われたと何かで読んだ記憶があります。
このまぶたのようなライトカバーは、スタイルを損なわずに空力と昼間のパッシングライトの使用を
考慮にした結果だそうです。ライトを点灯するとバキュームの力でクルッと下方に半回転して格納されます。
下段の画像はスタイル上の大きな特徴であるサイドのエアアウトレットです。一部をアウトレット風な
装飾パーツで済ませている車もありますが、この車は上から下段まで金網の貼られた”本物”なので
洗車時になるべくここから水を入れないよう気をつけた方がよいそうです。